一歳の誕生日は初めての筋肉痛記念日
生後十一ヶ月。
外は冬真っ盛りで雪が降り積もり、この赤子の身には少々辛いものがある。
俺は六ヶ月の頃にリーラを説得した。
すると、まずは魔法を覚えた方が便利だということでその通りに魔法について学んでいる。
「人間の子供というのは成長が早いのだな。」
「いや、俺は特殊なケースだ。一歳間近ってところじゃ、普通は二足歩行は無理だし、それ以前に俺は前世の記憶が有るからな。」
「……なんと。『神の童』であったのか。」
「いや、俺は人間の子供だが……もしかして、それは異名のようなものか?」
「そうだぞ。」
リーラ曰わく、人間の中には非常に僅かに前世の記憶を持った子供が産まれるらしい。
故に、神に選ばれたとされているらしいが、俺は事情が若干違うようだ。
前例者の話によると六歳から記憶を取り戻し、この世界の別の場所で生きた記憶だそうだ。
「それが事実なら、俺をこの世界に寄越した神とは別神だな。」
「いや、この世界に神は居らぬぞ?」
「は?」
「人間達はそう考えているらしいがそんな者は居らぬ。英雄死せど逝き着く所は皆同じだということだな。」
「何だその慣用句みたいなのは。」
俺が教えられている魔法の中で、まず始めに無属性魔法という、魔力さえあれば誰でも使えて底が浅いと言われる魔法を覚えた。
《【レイ】は、スキル【無属性魔法】、を獲得した》
無属性魔法は、魔力による物質の生成・消失、対人対物の強化・弱化、対人対物への魔力の付与・剥奪などなど。
数が非常に多いように思われるが、それは少しでも関わっている魔法を含めた量。
実際無属性だけで賄われる魔法はそう多くない。
なので単なる魔力を如何に効率化させるかが、無属性魔法使いの腕の見せどころだという。
《【レイ】は、スキル【魔力操作】、を獲得した》
「立つのが早いのは殆ど出自とは関係ないと思うのだが?」
「魔力を操作して何かを為せるなら、自分の中の魔力の流れを無理矢理操作すれば動けると思ってな。」
俺は見せつけるようにして高く跳ねる。天井に手が着いて流石にリーラも驚いている。
万能であると見せつけるためにバック転をしてみると、リーラはポカンとして口を開けている。
上手く着地して手の平や足の感覚を確かめて一息つける。
「……痛い。」
「無理に筋肉を動かすからだろう?!」
感じたことのない程の筋肉痛が全身を襲う。
《【レイ】は、スキル【体術】、を獲得した》
調子に乗ってしまった。前世もそうだった。調子に乗ってガールフレンドなんか作るから。
俺は床に横たわってリーラに運ばれながら、この激痛と何ら関係のない事を思い出していた。
「そういえば今日、一歳になった。」
「このタイミングで言うことか!」