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喪失の神医  作者: Crowley
第九章 新人の卒業
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勘違いされる系ではなく言いがかりをつけられる系

【レイ】はフェリスにとって何なのか。


それが聞きたいだけだと言われても、俺はフェリスではないから分かろう筈もない。


だが、彼が聞きたい事はそんな言葉遊びのような答えではないだろう。


「……ただの友人だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

「ハッ、んな訳あるかよ。そんな風に言う奴に限って何かあるもんだからな!」

「……まあ、(同じ馬車に同乗したとかで)何も無いわけではないがな。」

「ほら見たことか!(男女関係で)何かあったんじゃねぇか!」


おかしい、どこか話が噛み合っていない気がする。


いや、もしかしたらこの子の言うように、あの出来事は何も無かった部類に属してしまうのではなかろうか。


……現実逃避だ。これは明らかにこの少年が勘違いをしている。


「俺は護衛のようなものとしてついてきただけだ。パロミデスでは実力が心許ないし、フェリス自身ではまともに戦えない。リィンに至っては司書だ、いくら魔法の知識があっても実際には強くない。」

「フッ、そんな弱そうな体つきで何が出来るんだ?」

「そうだな──」


子供の挑発にあえて乗っかってみせるように、俺は後ろに回って少年の足を払うと、一応の護身用に持っていた短剣を彼の喉元に宛がう。


【魔力操作】で全身を操った一瞬の出来事に、少年は何が起きたのか理解が追い付いていない様子で呆けている。


「──近接戦闘は苦手だが、最低でもこれぐらいは出来る。それに関してはパロミデスの方が優れているがな。」


そう言って刃が喉の表皮が少しだけ切れた頃、少年は漸く理解に到達した。


絶対的な敗北というのは、この感受性の豊かな時期において大きな意味を持つ。


己を卑下し過小評価するようになり、自分に絶望してまた卑下する負のループに陥るか、反抗心を持って立ち向かい、倒せるまで玉砕する無限ループになるか。


「……もう、充分か?」

「チッ、覚えてろよ、絶対にお前からフェリスを守ってやる!」


起き上がってそう言い放つと、取り巻きと共に走り去っていった。


彼は後者のタイプのようだが、些か捨て台詞が気になってしょうがない。


俺からフェリスを守るとは。俺はそんな悪漢に見えただろうか。


「……寧ろ、俺は護衛なんだが。」


呟いた訂正は誰かに聞かれることなく消えていった。

レイは少年を一捻りしたようだ。

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