特大ブーメランは唐突に来る
「孤児院などとたいそうな名前で呼ばれちゃいるが、育児放棄された子供の集まりじゃ。」
「普段はスラムの顔役のお爺様が、町へ出て悪さをしないように教えているのですよ。」
目的地までの道中では、孤児院についての説明で大半の時間が過ぎた。
更にはその孤児院を纏めているお爺さんが亡くなり、このままでは孤児院が管理者不在により解体される事も聞いた。
「……んで、それを引き継いだのが俺。……ったく、勝手に逝くんじゃねえっつーの。」
「パロミデスがか?」
「だよな、レイもそう思うだろ?!俺も柄じゃねぇって言ったんだけどよあの爺、遺言遺して外堀まで埋めてやがった。とんだ狸爺だぜ……本当に。」
そう最後に呟くパロミデスの顔はこれまで見たいい加減な言動は嘘のように消え失せて反比例するように、暗く、重く、苦しく、哀しいものになっている。
「……パロムには、よく合ってると、俺は思う。」
「はぁ?どこが」
「お前はよく人を観察てる。誰が何を喜び、誰が何を怒り、誰が何を哀しみ、誰が何を楽しむのか。それを理解しているから誰にでも好かれる。その才能があったからお爺さんはお前を選んだ。」
「チッ……調子が狂う。」
パロミデスは舌打ちしてバツの悪そうな顔で頭を掻くと、窓の外を眺めて呟いた。
それきり馬車で彼は言葉を発することは無かったが、馬車に乗る前より幾分か雰囲気が柔らかくなった。
それから日が落ちて一番星が目立たなくなってきた頃、孤児院に最も近い農村に何事もなく到着した。
管理人代理がこの農村で村長をしていることもあり、今日はこの村に泊まらせていただくことになった。
「湯加減如何でしたか、聖女様。」
「はい、とても気持良かったです。何から何までありがとうございます。」
「ははは、私達はこれぐらいしかもてなす事が出来ませんで。」
村長の家に四人それぞれの部屋を分けてくれ、農村の割には豪勢な料理と暖かい湯船を提供してくれた。
なんと彼らの懐はきっと広く、温かいのだろうか。それほど迄に子供に手を焼いていたのだろう。
「それにあんなにやんちゃな子供達を纏めていただけるのですから、これぐらいどうってことありませんよ。」
「スラムよかマシな生活送ってんだ、大抵のガキは気が大きくなるもんだろ?」
肩を竦めて軽く言ってのけるパロミデスに、リィンは鼻で笑って返した。
「私から見ればパロミデスもガキじゃがな。」
「……見た目が一番子供のリィンが何を言うんだ。」
「レイも珍しく良いこと言うじゃねぇか。」
レイはリィンをイジった!