閑話:レイの休日~モノづくりの場合~
久し振りの休日だ。教官がまだ目が覚めないから、という消極的な理由からだが。
前回の休日は悪魔の脳幹を狙撃したM82擬きを部品毎に造っていた。
元々あれはもう少し成長してから、体格が良くなってから使おうと考えていた。
そして今日も何となく何かを作る気分だ。
弾丸は錬金術が物理法則に完全に従った訳でないお陰で、戦闘中だろうが寝ていようが簡単に作れる。
武器類は大丈夫そうな事を確認し、今度は防具や衣服の確認をしてみる。
伸縮性の高い魔物の革の服に胸当て等の軽鎧、同じ魔物革のスラックス、島で作った飛竜の鱗をソールに使ったブーツ。
そして銃を握りやすくする事と錬金術で弾丸を作る事を両立させた、前世ではよくバンドマンが着けていたような指貫グローブ。
よく見ると魔術式を編み込んでいた糸も解れ始めて、このまま使用を続けるのは危険だ。
「作るのはこれで良いとして、これは……使えるか?」
背嚢から取り出したのは島の主と思われる、白いぶよぶよの魔物から貰った脱皮した皮だ。
脱皮した直後の白さは何処へやら、内側の滑りを乾かす為に偶に天日干ししていたが、両面が闇のように黒くなってしまっている。
伸縮性を確かめてみると、今の服よりも圧倒的に伸縮自在で、おそらくゴムよりも伸びる。
全く針の徹さない革をギリギリまで小さく細く丈夫にした【無槍】を使い【裁縫】スキルで縫い合わせていく。
「はあ……はあ……は、ふぅ。何とかモノにはなったか。」
完成したソレを装着してみると、まるで自分の表皮と一体化したようなピッチリとした肌触り。
上手く作れたと満足感に浸ったのも束の間、ふと頭にとある欲求が過る。
改造欲求である。通常はプラモデル等で解消されて消えてしまうような儚い欲求である。
「……【レイ】も所詮、男の子ってことか。」
本来は手元の保護、銃把を握る際の滑り止め等の役割をするところを、ある種の暗器にしようと考えているのだ。
それは最早、改造ではなく魔改造だろう。
それから部屋に籠って作業する事丸一日と数時間。窓から日が顔を出し始めたのが見える頃、ようやくそれは完成した。
「よし、出来た。」
引き金を引く時の妨げになるのを考慮して、施したのは左手の甲部分と指の背の部分のみ。
四種一つずつの筒を横に半分に切り、指を伸ばせば繋がるように革と溶接した。
この世界で製作した銃と同様に、筒の内側……銃身の内側には魔術式を何個も描き上げた。
握ればメリケンサックのようなものにもなり、魔力を流せば弾丸を生成する。
撃つときはデコピンによる手動でも魔力による自動でも良い。
「アタッチメントを着ければ手動でも指を痛めない……うん、完璧だな。」
誰に聞かせるでもなく独り言をし、達成感を胸に俺はベッドへ潜り込んだ。
ちょいと閑話を挟ませていただきやしたが、次回は新章開幕。こうご期待!……と、言いたいですが、あんまり期待をし過ぎない程度でお願いします。