感情の発露
「……なるほど、それで持ち場を離れたと。」
「仲間の命を落とす事に比べれば頭は幾らでも下げられますが、教官はそんなことをさせたいわけではないのでしょう?」
「はぁ……賢い男は好みだが、賢すぎるのは考えものだな。」
苛々しながら天幕から出てきた教官に事情を説明すると、怒られるどころか呆れ顔で頭を抱えた。
教官の見解を尋ねると、【魔物使い】という珍しい職業か、それに属するスキルを持つ者だろうとの事だ。
「私はこいつと話がある。トリストラム、お前は天幕へ戻れ。」
「しかし、二人きりでは大群のような魔物が現れでもしたら」
「私とレイが居れば大抵の魔物はどうとでもなる。正直言って足手まといだ。」
渋々といった様子でトリストラムは天幕に戻って行く。教官が俺としたい話なんて何があるのだろうか。
トリストラムが天幕に戻ってから十数分間の沈黙の後、決心した面持ちで教官は重い口を開いた。
「ペインハートの嫡男から聞いたぞ。」
「豚鬼撃退の件ですか。」
「分かっているなら何故そんな無茶をした?」
獣を射殺せる程鋭い剣幕で睨み付ける教官は、顔一つ変えず黙ったままの俺に更に捲し立てる。
武器も持たずに山へ行った事や何の策もなく攻撃した事など、あの日の出来事が事細かに詰問された。
反論出来るものは何もなく、どれもこれも正論に違いなかった。だが、どれもこれも一言で解決できるのだ。
「……俺には、【レイ】になら、どうにか出来る。」
「一つ、レイは勘違いしてないか?」
勘違い。一体何を勘違いしているというのだろうか。今思えば豚鬼も一撃で仕留める事は出来たし、出来ないことは殆ど無い。筈だ。
教官は全く気付いていない様子の俺の肩を掴み、自分に向き直させるとパチンと頬を叩いた。
「レイ、お前は今まで何を見聞きしていた?お前は、お前達はパーティだろ、一人で行動してるんじゃないんだぞ?」
「……分かってる、それぐら」
「いや、分かってない!お前は一人で生きてんじゃないんだぞ、自分が出来るからって他人も出来ると思うな!本当に、私がどれだけ心配したことかッ……」
普段男勝りな教官がしおらしく泣き崩れる。その光景は【レイ】にとっては衝撃的なものだ。
そして俺にとっては前世の記憶をフラッシュバックさせるものだった。
「……わかったから、止めてくれ、頼む。」
「もう、独走しないって、神に誓えるか?」
神か。前世からそんなものは信じちゃいないが、誓うのなら彼女しか居ないだろう。
「……リーラに誓って。」
やっぱ、Twitterやってると無駄な雑談がへるんだなぁ
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