単独探索
「……またか。」
「どうかしたの、レイ?」
「視線を感じるな、と。」
「現役の探索者がここを見つけたのかもな。野営の準備だけしてあるのに当人等は居ないから不信に思って入ったのだろう。」
「だとしたら良い……良くはないか。」
二度目の交代があり、パーシヴァルとトリストラムが見張りになった。
交代してからはまだ一度も魔物の襲撃にはあってないが、その代わりに何者かの視線を感じるようになった。
パーシヴァルもトリストラムも視線は感じないと言う。どういうことかと頭を抱えていても埒が明かない。
「視線を向ける奴を探してくる。」
「駄目だ。パーシヴァルでは長く持ちこたえることは出来ない。」
「トリスの言葉はちょっと釈だけど事実よ。多くて三体までが対応出来る限界、それ以上は無理だよ。」
「なるほどわかった。」
俺を止める二人の言葉にも一理ある。彼等では大勢で来られたらひとたまりもないだろう。だがそれは今この地形の場合だ。
「【形成】……うん、こんなところか。」
「えーっと、これは、何?」
「砦擬きだ。籠城戦はまだ早いだろうが次の交代で教官に教えて貰うと良い。では行ってくる。」
「ちょっと、レイ!あー、もう!」
呼び止める声を振り切り、ダンジョンの中を息を殺し音を殺し魔物さえも殺して、視線を向けた張本人を追って走り出す。
俺が近付くと魔物の群が現れ、離れると魔物の数が少なくなる。相手は何らかの方法で魔物を操っているようだ。
幸い、魔物は先程まで出てきた小鬼や粘覆核ばかりなので、脳幹や核を撃ち抜き、角度が難しいものは【無盾】を使い跳弾を利用する。
しかし、幾ら走っても殺しても追い付く事が出来ない。遂には背後を捉える事すら敵わなくなった。
最後の群を突破すると、既視感のある天幕と既視感のある人達が驚いて突っ立っている。
「お、おかえり。どうしたの?一周回っただけ?」
「……ただいま。ここを誰か通らなかったか?」
「いや、誰一人として来ていない。魔物の大群が見えて教官らを呼びに行こうとしていたところに、レイが蹴散らしながら現れた。」
つまり、魔物が固まっている所に犯人がいると思い込んでいた所を利用されたということか。してやられたのだ。
相手は考える頭、魔物を操る術を持つ。しかし、此方を害するというよりは自衛の為の行動な気がする。それまで見ているだけなのが証拠だ。
「……面倒な事になった。」
「誰のせいだと思ってるんだ。教官との交代までは後少しだったんだぞ?」
「あ、時間だ。教官呼んでくる!」
何者か分からない上に何をしたいのかも分からない。