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喪失の神医  作者: Crowley
第一章 精霊と赤子
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夢が実現すると思わぬところに罠がある

生後二カ月目。天才と馬鹿は紙一重だと俺は耳にした事がある。


一週間前の事。少女は俺の世話以外では別の部屋でずっと何か研究をしていた。




視界がようやっと明瞭になった今、やれる事は発声練習くらいだ。


「うひゃぁーーーー!!」


いつものように発声練習をしていると、少女の叫び声が聞こえた。


今彼女に何かあれば俺は生きていく事ができない。


何があったのかと肝が冷えたが、どうやらその叫び声は嬉しい悲鳴のようだ。


「アーッハッハッハ!この大精霊様に出来ぬ事など無いのかもしれないな!」


そう言って扉を大きな音を立てて開く。それと共にプルンと揺れ動くモノ。


そこで俺は目を見開いた。やましい思いがあった訳ではない、シンプルに驚いたのだ。


昨日までの東ヨーロッパ平原が、突如としてヒマラヤ山脈へと変化したのだ。驚くべき快挙である。


「どうだ?これなら母乳も出るだろう?出なくても吸うだろう?」


そう言って強調するように腕で寄せたり、持ち上げては手を離したり、自分でも吸えるか試したり。


ひとしお楽しみ終えると正気に戻った。


そりゃそうだ、幾ら赤子の俺しか居ないからといって、はだけさせた服から零してずっとバインバインしてたのだ。


クリスマスやバースデープレゼントを開封した子供も大概だが、これで錯乱してないのならばついていけない。


「……?何故入らないんだ?……はっ、大きくなりすぎて服のサイズに合わぬのか!妾としたことがッ!」


一々リアクションの大きい少女だ。そんなんだから天を仰ぐのに釣られた乳に殴られるのだ。


「うぅ……新しい服を何着か作らなくては。」




そして時は現在に戻る。


「最近は肩凝りが酷いな……いや、まさかそんなわけ無いだろう。」


いやいや、恐らくあなたの予想は合っている。それはもう、1+1=2であるのが当たり前のように。


「だって母上もあんなに大きかったじゃないか。肩凝りとは無縁だったじゃないか。」


それはきっと大人の身体に大人の胸だったからだ。


それ以前に精霊の親は精霊だろう?なら肩凝りなんて有り得ない。凝る筋肉が無いのだから。


「……心なしかあの子に馬鹿にされているような気がする。」


変なところで勘が鋭い。


結局母乳が出ないままで悪影響が起きているのだ、馬鹿にしない方がおかしい。


黙って差し出された哺乳瓶から、山羊ミルクを熱処理加工されたものを呑む。


最近は合図を出さなくても、頼む時間が定まってきた為に何となく察している。


「吸ってくれぬのか……?」

「ん。」

「そ、そうか……あれ、肯定した?」



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