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喪失の神医  作者: Crowley
第七章 夏季の遠征
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そっと忍び寄る不和

迷宮(ダンジョン)。危険だが攻略すれば一攫千金を狙える、ハイリスクハイリターンの命を賭けた賭場。


その場所の入り口に今、俺達は天幕や結界で陣をとっている。


「いやぁ、久し振りだなダンジョンは。何かこう、ワクワクする。」

「これから死地に行くのによくそんな嬉々としていられますね?」

「お、パロミデスはビビっているのか。フッ、所詮まだガキか?」


本当に楽しみなのか、パロミデス相手に煽っている。普段はそんなことはしないのだ、どちらにせよ昂っているのは違いない。


作戦としては今日から最低でも三日間は、浅層を一層一層地図を作成しながら攻略していく。


余裕があればスピードを早め、なければ緩める。


「攻略しないって、教官言ってたじゃないですか!」

「あれは一時的に安心させる為の嘘だ。それくらい判るようにならなければ、フェイントに対応出来ないぞ?」

「それとこれとは違います!」

「じゃあ辞めるか?探索者になるの。」

「……辞めません。」

「ならいい。お前が何をしに探索者になるのか、ちゃんと考えろ。」


最近は教官の口調が以前と変わってキツいものになっている。何か心境の変化でもあったのか、それとも糖分が足りないのか。


何でも良いが、変わってしまったという事実が大切だ。予想はあくまでも予想でしかない。


【レイ】の平穏の為にも聞いておきたいが、それが彼女のパーソナルな範囲のことならば俺が口を出すのも可笑しな話だ。


結局、俺は何も聞かず終いでダンジョン攻略を始めた。




「せいッ、パーちゃん!」

「うん、てやぁ!」

「GUGYAAA!」

「はッ、パロミデス!」

「分かってるって、せいやッ」


ダンジョンは思いの外広い。多少隊列が崩れてもまだまだ余裕がありそうな程に。


ダンジョンに入ってから数分で小鬼(ゴブリン)の群れが現れて戦っている。


基本的に俺はサポート役に徹している為、皆の戦闘中は強化魔法が切れるまで待機、動くのは偶に立体的に戦う為に【無盾(ノートシールド)】を使う位だ。


こうして皆の戦う姿を見ていると、改めて【レイ】が育った環境がイカれていたのかがよくわかる。


「後方支援はつまらないか?」

「……教官ですか。この程度なら三秒で方が着きますから、楽しい訳じゃないですよ。敢えて言うなら暇です。【小回復(レッサーヒール)】。」

「ありがとうですわ!」


咄嗟の不意打ちにはまだヴィヴィアンは弱い。最低限以上に盾で前を隠してしまう癖がある為だ。だからこうして傷を受ける。


「三秒だと?」

「ええ。【レイ】は強いですから。」

「……?何でもいいが自惚れは無くせ。でないと死ぬぞ?」

「自惚れではなく事実です。」


優勢のまま一方的に終わりを迎える戦闘をじっと見守る。故に、俺の言葉に教官が目を細めた事を知る由もない。

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