閑話:快挙と言えるのかどうか分からなくなる時もある
「今日は『契約』について教えよう。」
「何か取引でもするのか?」
「ここで言う『契約』とは、【召喚術】【精霊術】、モノによっては【死霊術】でも使うものだ。売買契約等ではないぞ。」
先月迄は【錬金術】をリーラには習っていたが、今月からは『契約』を必要とする魔術について教わることになった。
「『契約』を用いる魔術の中では最も有名な【召喚術】から始めるが、召喚と聞いてレイは何を思い浮かべる?」
「召喚か……前世での知り合いは使い魔を呼ぶとかが創作物では流行っていたと聞いたことがあるが。」
「ふむ、概ね正解だな。」
だが、と続けるとリーラは一段高いところに登って俺を見下ろした。
「召喚する側とされる側……これは常に対等で有らねばならない。」
「なる程、だからこその『契約』なのか。」
「勝手に呼びつけて勝手に命令する。人間じゃなくてもそれは嫌な事なのだ。それを肝に銘じてから、魔術式を書いて呼ぶのだぞ。」
「分かった、やってみよう……こうか?」
「うむ、良く書けているな。ちと厠へ行ってくるから、そのうちに召喚を済ませておくと良い。」
リーラに促されて魔術式を書く。【錬金術】はやや角張った印象の幾何学模様だが、【召喚術】はどちらかというと丸みを帯びている。
リーラに言われた通り、出来上がった魔術式に魔力を注ぎ入れる。この時、リーラが教えたのは【不特定召喚】。
召喚者と最も相性の良い魔物又は魔獣を召喚するもの。そして魔力を注ぐ量によって相手の強さが変わる。リーラはこれを伝え忘れた。
取り敢えずで魔力を注ぐが、【錬金術】ほど魔術式が光らない。【錬金術】位まで光らせるには総魔力量の五分の一を要した。
「戻った戻っ……!馬鹿者、注ぎ過ぎだ!」
「【錬金術】程光らなかったからな。」
「暢気なことを言っておる場合か!臨戦態勢をとれ、最悪殺されるぞっ!」
俺はリーラに従って近くから銃を構える。
光り続ける魔術式からは、シュレッダーにかけた資料が逆再生されるように現れる。
しかし、全く姿が見えない。だが魔物が出しているだろう風を感じる。風だけを、感じる。
「失敗したのか?」
「否、成功だ。召喚されたのは透梟、絶滅したと思われている鳥だ。」
「中々な快挙だな。」
「乱獲等の理由ではなく只見つけるのに苦労するだけの只の鳥。魔物ですら無い。魔物魔獣を召喚する魔術で動物を召喚するとはな。」
「……まあ、快挙には変わりないか。」
結局契約はしたものの終始リーラの薄ら笑いが聞こえて喧しかった。
二日位したら次章に
入りヤス。
もしかしてヤス?
違いヤス。