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喪失の神医  作者: Crowley
第七章 夏季の遠征
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一時の感情が人生を左右する事もある

俺達はコボルトの死骸を片付けていた衛兵に声をかけ、裏山であったことについて話した。


彼はすぐに上司を呼んで対処する、と言うと数時間後には探索者数名が待機していた。


この裏山は魔物よりも魔獣が覇権を握っており、オークの肥えた脂身は彼等の重要な餌の一つらしい。


「……つまり、魔獣に何かあったと言うことなのか?」

「断言は出来ないが、その可能性は著しく高い。もしかしたらスタンピードに混ざって討伐されてしまったのかもしれないな。」

「なあ、結局魔獣って討伐出来るならしようぜ、って感じなんだろ?なら何でそんなに深刻になってんだよ?」


俺と衛兵主任との会話に疑問をぶつけるパロミデス。彼の言っていること自体は間違ってはいないが、今回の事例には当てはまらない。


彼の疑問に主任が紙に三角形の図を描いて丁寧に説明する。


「────というわけだ。そしてこの三角が元に戻るのには人間にして三世代は掛かると言われている。」

「あー、そりゃあ深刻になりますわな。」


パロミデスが理解を示したところで、主任に俺達が報告の他にしたかった話をする。


「……俺達を討伐隊のメンバーに入れてくれ。」

「駄目だ。幾らボア教官の教え子とはいえまだ半人前だし、大事な後輩をしかも優秀なのを駆り出すわけにはいかない。」

「……先輩だったのか。」


幸いまだ街には優秀な探索者が多く滞在している、とそれを理由に出されぐうの音も出なくなってしまった。


結局俺達の出る幕はなく、討伐隊は朝日が昇る前に出発して昼前に帰ってきた。


返り血を見る限り魔物自体はさほど脅威ではなかったみたいだが、数がそれなりに多かったようで鎧の損傷が激しい。


「なあ、レイ、お前錬金術使えるよな?」

「……まあ、そうだな、平均以上には使えるぞ。」

「ならよ、裏山の坑道で煉瓦の金属採れないか?」

「……採れなくはないだろうが、そんなことをする必要があるのか?」


パロミデスは帰ってきた討伐隊を見て染々と言った一言に、そう返すと悪魔を見たような顔をした。


「お前何であれを見てそんな冷たい事言えんだよ?」

「よく考えろ、パロミデス。あの裏山の所有者は誰だ?廃坑とはいえ何の許可もなく採ればそれは犯罪だ。」

「けど、採れなかったとこから採れたら差し引きでゼロだろ?!」

「馬鹿かお前は。法的にはそうだが、俺達の立場はどうなる?探索者にはなれなくなる。商人と傭兵は信用第一、一度の罰は命取りだ。」

「それは……そうだけど。」

「一時の感情に流されるな、もっと先を見据えて動け。成人は十五歳なんだぞ、俺達はもう子供だからと許される年じゃない。」

「……わーったよ。」


パロミデスは俺の最後の一言に言い返さず、舌打ちして宿の中へ帰って行った。

次回閑話を挟んでこの章は終わります。

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