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喪失の神医  作者: Crowley
第七章 夏季の遠征
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小難しい長い話は嫌われる原因になりうる

そのまま川原で遊び続け空が赤く染まり始めた頃異変が起きた。


きっかけはトリストラムが遠目に見た犬鬼(コボルト)の小規模の群だった。


その群は血だらけのまま特に得物も持たず、近くに無防備な俺達が居るにもかかわらず無視して街の方へ駆けていった。


幸いにも街の衛兵でも余裕で対処出来る程の規模の為、今回は見送って何だろうかと首を傾げる。


まるで逃げているようだ、と言った彼の言葉は運悪く的中してしまった。パロミデスはそれを指して小声で言った。


「なあ、おい、あれ、豚鬼(オーク)じゃないか?」

「嘘……!私達丸腰なのに!」

「嘆いたところで仕方がないぞパーシヴァル。次にどうするかを」

「見付かる前に逃げますわよ!」

「……いや、もう手遅れだ、目が合った。」


俺がそう口にしたと同時に豚と小鬼(ゴブリン)の混ざったような鳴き声を発して走って来る。


攻撃を受けづらいように全員川の中に肋まで浸かる。幸い流れは殆ど無いに等しいが、子供の体では長くこの状況を維持するのは厳しい。


どうにか撒けないかと考えていると、パーシヴァルにおぶられている俺は、ふと一つ作戦を思い付き川の水を少し飲む。


「……多分硬水だ、いける。パロミデス、俺を抱き抱えてくれ!」

「お、おう?分かった!」


俺はパーシヴァルの背中から離れて体育座りをして抱えられる。


そして、止める声を無視して親指の腹を噛んで血を出し、左手の平と甲に別々の魔術式を描く。


「【製錬】、【形成】、【(カイ)】【界】……よし。」


甲で【製錬】平で【形成】し、そして抽出したモノを最も脆弱な結界魔術の【界】で、真空の層と水が入った層に分けて閉じ込める。


そしてそれをトリストラムにすぐそこまで来ているオークの頭に向けて投げさせる。


トリストラムの投げた結界の球は、すぐそこまで来ていたオークの頭に当たる直前で結界が砕けて白煙が上がった。


中身が掛かって身悶え苦しむオークを見て作戦の成功を確信する。


「……今のうちに逃げるぞ!」


俺の掛け声に各々よく分からない様子で応えた。




俺のしたことは結局の所、化学と魔術の併用だ。


・硬水からカルシウムを抽出して単体のカルシウムにした

・結界で二つが先に合わないようにした

・カルシウム単体に水を加えて消石灰と二酸化炭素を発生させた

・強塩基の為目に掛けて失明を狙った


試しに内容を話してみても博識なトリストラムでさえ頭を抱えた。


「なあ、馬鹿にも分かるように言ってくれよ。」

「……顔を溶かして隙を作った。」

「んだよ、そんな事か。あんま難しく言うなよ。」

※今回出てきた現象は、反応速度等が実際とは異なるかもしれませんが、第一章第4話に記述した通り筆者のご都合主義です。何卒御了承下さいませ。

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