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喪失の神医  作者: Crowley
第六章 新人の成長
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閑話:本当の自分

記念すべき第五十話はなんと!閑話です。

それは教官を【無盾】に乗せて帰ってきた日の事。


「おや。君かい、うちの娘が連れてきたという新人は?」

「………………あ、はい。」


振り向くとそこには柔和な微笑みの、顔に似合わぬ屈強な肉体をした初老の男性が立っていた。目元等から教官の父親だと推察する。


思わず凝視してしまい返事が遅れた。凝視されることになれているのか、恥ずかしがるどころか寧ろ自慢気に胸を張っている。


「娘がとんだ醜態を晒してしまったな、すまない。そして運んでくれてありがとう、新人君。」


貴族だろうに非もなく頭を下げる物腰の低さに驚いてしまうが、教官を見ればこの親にしてこの子あり、と言わしめる説得力がある。


直ぐに頭を上げてもらった俺は、何か用事があったのか尋ねる。玄関で仁王立ちしていた程なのだから、余程の理由だろうか。


「いやね、あの娘が面白いと言っていたからな、とんだクズ野郎だったら摘まみ出してやろうかと思っていたが、案外普通だったな。」

「……教官は男選びのセンス悪いんですか?」

「んー、あの娘は人をダメにするんだ。たとえ嘘と分かっても甲斐甲斐しく世話をする。ははは、父親としては全く困ったものだよ。」


教官の父と並んで歩きながら【無盾】の上で気持ち良さそうに笑って寝ている教官を見つめる。


幾ら子供とはいえほぼ見ず知らずの俺を泊めてくれているのだ、教官らしいっちゃらしい気がする。……知り合ったのは今日だが。


「うむ。ここで良い。あとは僕がベッドに運ぶとするよ。」

「……本日よりお世話になります。」

「ははは、良いよ。君が大成して娘を娶ってくれれば。」


驚きの一言に思わず返事が返せない。開いた口が塞がらないとはこの事だろう。


「君は僕を見ても何も言わなかった。まあ、言葉は詰まっただろうが、その後すぐに自然体になった。うん、将来有望だね。」

「……買い被りすぎです。」

「ははは、そんなことはないさ。僕の一族にはね、分かるんだよ。相手の強さが目に見えてね。」


そう言うと彼はその大きな手で俺の頭を撫でて言った。


「君は精神が脆い。だが、その強さは本物だ。その小さな体でどれ程の経験を積んだのかは分からない。」


頭から手を離し、教官を抱えるように持ち上げると更に続けた。


「自分を強く持ちなさい、君は君しか居ないのだから。自分を、自分の魂を騙るのだけは止めなさい。僕には今の君は辛そうに見える。」


そう言うと、彼は部屋の扉をパタリと閉めた。


自分を見透かしたような言葉が俺の何かを貫いた。


……これが魂と言うものなのだろうか。


翌朝、話した内容は殆ど抜け落ちていたものの、目覚めは久し振りにスッキリしたものだった。

また二日三日したら新章始まります。


2021/1/21 修正しました。

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