人を試すような奴にマトモな性格の奴はいない
人の上を【無盾】で渡る。紹介状の渡し主の手掛かりは封筒に描かれた紋章のみ。
探索者は竜の全身を斬り裂く剣、傭兵は剣が三方向から重なった紋章だ。
帝都ならば直ぐに見つかるだろうと楽観視していた自分が恥ずかしい。
それもそうだ。ここは住宅区、探索者も傭兵もどちらもギルドは商業区に位置している。
下に降りて通行人の一人に尋ねると直ぐにその事が分かり急いで東へ走る。
住宅区と商業区の間にも簡易的な関所のような所があり、一度着地し通ってまた視界の開けた空へ昇る。
見渡すと簡単に見つけられた。まずは一番近くの傭兵の方へ行ってみる。
「ガキが遊び半分で来るような場所じゃあねぇぞ。」
受付の厳つい男性に話し掛け、返答された第一声がこれだ。
「紹介状を偉い人に渡すようにと言われたのだが。」
「あー、お使いか。分かった、ちょっと待ってろ。」
受付の男性は奥の階段を上って行くと、少しして漸く降りてきた。値踏みする視線が気になるが、突然紹介されたのだから仕方ない。
男性に受付の職員用入り口から俺は男性に連れられて、二階へ行く階段を昇る。
途中、絶対に驚くなよ、と言われ少し不穏なモノを感じるが今更退くことも考えられない。……念の為、拳銃は取り出しておく。
「GOAAAAA!!」
ギルドマスターと書かれた札の部屋の扉が開かれると、中からは大人一人を飲み込める程の獅子が居て、大きく吼えられた。
襲われるかと思い咄嗟に喉奥に射線を向けたが、口を大きく開けたまま静止し、数秒後には蜃気楼のように消えた。
「フフフフ、彼の言った通り見込みは充分にありそうじゃない。滾るわぁ、フフフ。」
「守りに入るくらいなら予想してましたが、まさか殺しにくるとは分かりませんでしたな。」
消えた獅子の後ろにはソファに腰掛ける金のロングヘアの男性と、その傍らに立つ白髪の執事らしき老人が居た。
この二人の格好や口調、立ち位置から察するに、ギルドマスターとは金髪の彼……彼女の事だろう。
「案内ご苦労様。もうすぐで次が来るから今日は上がっていいわよ。」
「分かりやした、お先に失礼します。」
執事に通されて部屋のソファに腰掛ける。さて、と一言置いた彼女は予想通りの話をした。
「あなたが察してる通り、私がギルドマスターよ。彼の手紙からは想像出来ない位可愛らしいお顔なのね。……がっかりしちゃったわ。」
……最後の一言以外は。
【プチ解説】
帝都は円形の都市で、城壁は東西南北に一つずつ門がある。商業区と住宅区を分ける内部壁は、城を交点とする九十度の✕印に設置されている。
内部関所は云わば交番のような役割を担う為、壁に沿って複数箇所設置されている。
以上プチ解説でした。