実力の証明は実践(実戦)でなきゃ難しい
「え、フェリス言ってなかったの?!」
「いや、色々あったし何か言った気になってたみたい。ごめんね?」
「……いや、まあ、大丈夫だ。」
無論、大丈夫な筈がない。勿論、帝都と言うからには首都だとして、紹介状は無駄になることはないだろう。
しかし、帝都は子供一人で生活基盤が整えられるような物価なのだろうか。否、高いに決まっている。首都とはそういうものだ。
一応、斯々然々で探索者か傭兵の紹介状を持って行き一人暮らしする旨を伝えると、案の定フェリスと同じ反応が返ってくる。
「そんな、12歳の女の子が帝都で一人暮らしなんて……自分の身を守るものは何かある?」
「……【無属性魔法】と、魔術を一通り。【生活魔法】も使える。」
「あとあと、レイ君は男の子だよ!」
初めから見抜いていた訳じゃないが、フェリスは賢しげに胸を張って言う。
やはり髪型がいけないのだろうか。もっと筋肉をつけても良いかもしれない。
「それは済まない事を言った……だが、それでも君のギルド加入は勧めることは出来ない。そもそも君は魔物も人も殺せるのかい?」
「アーサー、後方から怪しい奴等が追いかけてきてる。」
セシリアの一言で皆が馬車に追随する奴等を見る。人数や背格好を加味してもやはりあれはハミルトン一派だ。
「聖女ぉ、糞ガキぃ、絶対にぶっ殺す!」
割りと距離があるなか、ここまで声が届く程の大声を出して殺害予告を宣言している。
「追いかけて来たのか!セシリア、上に登って何とか出来るか?」
「うん、いけるわ!」
「駄目だ。弓を隠し持ってる、集中放火されるぞ。」
「えー、どこどこ……うわ、ホントだ。」
馬具の両脇に付いているのを組み立てれば、簡易的なものではあるが弓になるだろう。
「アーサー、俺には殺せないと思っているのか?」
「今はそんな話をしている場合じゃな……ここから奴等を倒せるのか?」
「倒すじゃない、殺すだ。」
俺は客車の後ろにいるアーサーらを押し退け、背嚢から取り出した拳銃の銃口をハミルトンの眉間に向ける。
揺れる馬車の中、俺は射線をハミルトンへ向けて引き金を引いた。
直線的に発射された弾丸は狙い通りハミルトンの眉間を貫通する。
続けざまに部下達の眉間も撃ち抜いていく。一人二人と落馬していき漸く馬だけになった所で馬車が止まった。
「戦闘能力は人並みにあるだろう?」
アーサーも、セシリアも、ミリアーナも、ルトも、そしてフェリスでさえも一方的な惨劇に唖然としていた。
2020/06/25 修正しました。