彼我の感情の温度差は気まずさを生む
「はあ、はぁはぁ……何とか、撒けたみたいだね。」
「ああ、そうだな。」
俺達は路地を抜けた後ある程度高くまで跳んで行き、ハミルトンの部下が走っていく反対側に逃げた。
固まって行動とは随分頭の悪い探し方だ。お陰様で現在地が分からなくなってしまったが、致し方ないだろう。
地面に降りた後、偶々近くにあった宿屋の女将がフェリスを知っていたらしく、一時的に匿ってくれ一息着いていたのだった。
「何であんなに跳躍力があるの?あ、飛べるなら何で気持ち悪かった時飛ばなかったの?」
「無理矢理【魔力操作】で脚を操っただけだ。それに、やったら筋肉痛になる。」
「そ、そうだったんだ。」
「空中を移動できる話をしようとしたら、遮られ切り出しづらくなった。」
「ご、ごめんなさい。」
責めてるつもりは無いのだが、口調がいけないのかトーンがいけないのか。そこまでしょんぼりされると此方も気まずい。
しかし、困ったことになった。俺をどこか人が疎らな通りに置いてくるだけの予定が、盛大に狂ってしまった。
フェリスを一人にすれば殺されて、こういう所に長居するのも無関係な人に、被害が出るかもしれない。
「レイ君、もし良かったら何だけど、私達と一緒に来ない?」
「……俺は最悪奴等を殺せるから大丈夫だ。」
「ダメ、そんな簡単に殺すとか言っちゃ。それじゃああいつらと一緒になるのよ?」
前世の話だけではなく島で既に何人も殺しているのだ、今更堅気になんてなれはしないのだ。
俺が考えていること十分。階下で大きな物音と怒号が聞こえた。多分あの部下達だろう。そして多分一人だ。
「考えている暇は無さそうだ。【形成】」
「それってどういう」
質問をしようとしたフェリスを遮るように部屋の扉が破られる。
「ヘヘッ俺が一番じゃん、全くツいてるぜおゲギャア!」
と、同時に取り出した銃弾を鉄の三ツ又の棍棒に作り直し、部下の股間と鼠径部を砕く。
これで生涯子供の顔を見るどころか歩く事さえ儘ならないだろう。
「フェリスについていくってことだ。俺にもする事があるから、途中で去るかもしれないが、宜しく頼む。」
「ほ、本当に?!良かったぁ、安心したよぉ。」
それで泣かれるのもまた俺だけが気まずいから止めて欲しい。