相手の勝手な勘違いは察することでしか直せない
「お名前は何て言うの?」
「……レイ」
「そっかぁ、レイちゃんかぁ。お父さんかお母さんは何処に居るの?」
「……分からない。生きては居る、と思うが何処に居るかは、分からない。」
「そ、そっかぁ。ごめんね、変なこと聞いちゃって。」
「……いや、大丈夫だ。気にしてない。」
左手を繋ぐのは修道女フェリス、桃色で髪の長い女性だ。一体どんなDNAをしているのか気になるところではある。
人混みから避難をするために彷徨いているが、彼女の身長では遠くを見ることが難しく、暫く通りの端を歩いている。
「あ、此処!」
彼女は突然大声を出して大通りから外れ路地裏に入る。
薄暗い小路二人並んで歩く。一度だけだが、彼女の通ったことのある道らしい。
「レイちゃんは何処に住んでるの?」
「……家はない。知り合いに、紹介して貰ったとこで、働くつもり。」
「ふぅん。何処で働くの?」
「……探索者か、傭兵だな。」
俺の答えにフェリスは血相を変えて捲し立てる。
「えぇ?!ダメだよ、まだ子供なのに。お姉さんがちゃんとしたお店紹介してあげるから!」
そう言いながら俺を抱き締める。
会話の端々から何となくだが、彼女が俺をどう思っているか分かってきた。
「……俺を幾つだと、思ってるんだ?」
「お、俺?」
「十二歳の立派な男子児童だ。」
「え、そ、そうだったの?!ご、ごめんね、気付かなくて……」
「……まあ、この髪型じゃあ、しょうがないか。」
俺から離れると、一旦落ち着いてまた路地裏を歩く。
手を繋いだ方が良いのか、はたまた俺が嫌がりはしないか等と、考えているのだろう。手を伸ばしたり引っ込めたりしている。
何だかもどかしくなって自分からフェリスの手をとると、彼女からしっかりと手を握る感触が伝わってくる。
柄にもなくこんなことをしてしまうのは、きっとフェリスが彼女に似ているからだろう。
「おやおやぁ?勇者サマパーティの聖女サマじゃあないですか。ガキを連れて護衛も着けず、路地裏でお散歩ですかぁ?」
「……私達に何か用ですか?」
「いやぁ、なかなか自分でも存在感はあると思っていたんですけどねぇ、お忘れですか?」
俺が感慨に浸る間に何やらこの狭い路地に五、六人の男共に絡まれていたようだ。
「先日壊滅させられた盗賊団『鉄屑の錆刃』の頭領、ハミルトンですよぉ?いやぁ、体力の回復が大変でしたよぉ。」
ねちっこい口調の痩身の男、ハミルトンは懐から毒々しい色合いの短剣を取り出した。
なんと、早く(?)も1000PV突破しました。とてもとても嬉しいのですが、元々書いてたものよりも早く獲得してしまい、ちょっと複雑な気分になってます。
何はともあれ、これからも宜しくお願いします。
2020/6/13修正しました。