出会いも別れも突然に
ダリスがどう説明したのかは知らないが、説明に向かってからたった数分で戻ってきた。
どうやら昔の知り合いだったらしく早く済ませることが出来たらしい。そんなことで良いのか、帝国。
下船する際に気付いた事だが、帆が船内のシーツに置き換わっており、俺が取り付けた帆は背嚢の魔法具に入っていた。
船の所有権については俺は予め要らないと宣言している為、一度競売に掛けてダリス達でその金を分配することになった。
「色々世話になったな、坊主。」
「世話をした覚えは無いがな。」
「ったく、無駄に謙虚なのな。まだガキなんだ、優しそうな大人の前では傲慢でいいんだぞ?」
「凶悪な面をしてよく言うよ。」
少しカチンときていたようだが、言い出しっぺだからか反論はしないようだ。……まあ、客観的な事実だしな。
それから各々と別れの挨拶をしていく。が、一人の少女が見当たらない。
名前は聞いていないが、色々事ある毎に噛みついてきたあの少女だ。
「あの、俺と同じくらいの背の女の子は何処に?」
「あぁ、あの子?あの子なら、船内にいると思うわよ?」
「そうか、分かった。ありがとう。」
「何々、気になるの?もしかして好きになっちゃったとか?」
「最後くらいまともに挨拶くらいは、と、思っただけだ。」
まあ、挨拶が無いなら無いで彼女なりの別れ方なのだろう。ただ嫌われているだけな気もするが。
「そういや坊主、食い扶持はあんのか?」
「いや、無いな。何処かの店で雇ってくれるとこを探すつもりだ。」
「その年だと雇ってくれるとしたら基本丁稚だが、ちゃんとした店じゃないと使い潰されるからな?」
成る程、異世界の先輩は割りと頼りになるようだ。だがちゃんとした店というのは何のコネも実力もなくは入れないだろう。
「そんな坊主には俺が紹介状を書いてやろう。坊主は人と魔物、どっちが殺りやすい?」
「人間の方が慣れてる分楽だな。それに脆いし。」
「……そ、そうか。なら、探索者と傭兵の両方に紹介状出しとくか。」
「ありがとう、悪いな。」
「こんなんじゃ恩返しにもなりゃしねぇよ。」
そうこうあって、彼等とは別れることになった。