入国
蒼い空に疎らに浮かぶ白濁の雲、濃紺の大洋を疾駆する銀の魚群。
俺は今、異世界の大海原を眺めて、先々の事を考え物思いに耽る。
舵は元船乗りの男に任せ、甲板に固定した椅子に座っている。
他人からすればどこかの貴族の優雅な船旅のようにも思えるが、リーラが居たらと考えると茶化されそうで少し恥ずかしい。
「下ろした帆で扇を作るのはまだ良いが、それで俺を扇がないでくれ。」
「だってレイ君暑そうだったしー?」
「それに可愛いしねー?」
「……好意だけ受け取る事にする。」
島から出航してから約3日。ちょっとした問題はあったもののそれも直ぐに終息し、今はとても安全だ。
海には何の異常も見られないので、結界を張って外界と隔たりを持たせて眠りにつく。
──あ、繋がった
頭に直接声が響く。まるで二日酔いのようだ。
──気分はどうだ、人間
目が覚めると、見たことのある世界が広がっていた。
──まさかあのような事態に陥っているとは思わなかった
真っ白な空間に精神がぽつんと残されている、あの空間。
──【越境】による加護の減耗がここまでとは思いもよらなかった
話し掛けてくるのは顔も名前も解らない自称神。
──全ては我の思慮不足が原因となる。誠に済まなかった
謝罪は要らない。何故俺をまたここへ呼んだのかが知りたい。
──そう言うのならば単刀直入に言おう
自称神は一呼吸おいて話し始める。
──極彩色は諦めよ、無色であれ
色を何かに例えていることは理解した。それが何かを教えろ。
──失ったモノを盗り返せ
失ったモノ……?取り返せないモノもあるが。
──奴は貴様を恐れている故に貴様から奪う
奪う?取り返す、ではなく盗り返す、か!
──運命は貴様の力に
バチン
「レイ!起きろ!」
「ッ!はぁ、はぁ、はぁ……」
「どうした、悪い夢でも見たか?」
何かが弾けるような音が聞こえたかと思うと突然目が覚めた。
傍らには主導していた男と扇いでた女性二人。他にもちらほらと様子を見に来てくれていた。
どうやらあと一船の検閲が終われば入国出来るところまで来ているらしい。
「体調が悪いなら代わりに船長役やってやろうか?」
「……あぁ、頼む。」
「おう、頼まれたぜ!」
鉛のように重たい頭を抱えながら、俺は帝国とやらに入国した。
話が纏まらない症候群に陥ってます。
ぐだぐだな展開は避けるように善処します。
因みに、この章はこれで尾張です。
つまらないボケでした。