自分にとって何気なくとも他人にとっては重大だったりする
「言ってることの殆どが、分かんないんだけど。出来るってことでいいわけ?」
「……ああ。端的に言えばその通りだ。」
リーラから教えてもらった限りでは、魔法式は電子的な回路と殆ど変わらない。
だからこそ、用心して取らなければならない。ブレーカーのようなストッパーがあるならまだいいが、多分、これには付いてない。
わざわざ説明して怖がらせる必要もない。俺は彼らを連れて小屋まで移動した。
途中、脇から飛び出してきた魔物は【無槍】で皮膚の薄い部分を狙い、串刺しにして森の奥深くまで吹き飛ばす。
以前よりも雑魚狩りは楽になり、奴隷達の度肝を抜いている。
小屋に全員が入ると流石に狭く感じる。しかも【神殿】の中はここよりも更に狭い部屋だ。
まずは一人、魔法具に手を触れて感触を確かめながら魔力を流していく。体感的には大体一万程でしかない。
「熱ッ……」
「大丈夫、火傷はしない。魔力に直接触れているだけだ。」
「け、煙出てるけど……?」
「……式が歪み始めた証拠だ。よし、式は完全に壊れた。」
が、リーラも驚くようなトンデモ魔力量の俺からすれば大した消費ではない。
二人目三人目と立て続けに破壊効率の良い部分を見つけた。
《【レイ】は、スキル【術式学】を獲得した》
そのスキルを得てからは更に合理化、効率化され最後に至っては作業ですらなくなった。
「何か、突然動きが早くなったがどうしたんだ?」
「……新しいスキルを得たからな。」
「なんてタイミングのいい……」
そこに関しては俺も同じ意見だ。
次に、魔法具を取り外した順に【神殿】に入ってもらい、各自でジョブを変更してもらう。
中に入れる度に感嘆の声が外からも聞こえて、本当にジョブが変更出来るということが証明される。
最後のジョブチェンジが終わると、【神殿】の外では変更を終えた者達が各々抱き合い、喜びを分かちかっていた。
「ありがとな、坊主。」
「……まともに呼び方を変えたのは、あんただけだったな。」
「おいおい、茶化すなよ。幾ら言ってないとはいえ勝手に解放するのは犯罪だ。だから本当はこんな事頼みたくなかったんだからよ。」
「……礼は要らない。追々やろうとは、思ってたからな。」
そう言うと目を大きく開いて男は驚いた。
「あんだけ居た帝国軍を全滅させておいて、今更良心が咎めるってか?坊主はやっぱりお子様なのな。安心したぜ。」
「そんな高等な理由じゃない。」
「『やらない善よりやる偽善』って言葉知ってるか?」
「偽善でも、独善でもない。ただ、思い出したくないだけだ。」
前世での出来事は思い出して楽しいものでもない。何れも最悪な結果が待ち受けていた。
「何か奴隷に嫌な思い出でもあんのか?」
「……昔ちょっとな。」
「昔って、お前まだ十二かそこらだろう?」
「……色々あるんだよ、人間には。」
「?そうか、まあ、俺らが助かったのは確かだ。ありがとう。」
最近読んで頂く方が増えはじめて嬉しい今日この頃なのですが、実は筆者、スマホで執筆しています。そして、先日機種変しましたところ、画面の大きさが大幅に変わってしまった為、一つの文章量が変化していると思われます。ご了承下さい。