終活を否定する気は無いけれどそれはフラグだと思う
「レイの旦那!あっし等はどこを修理すれば良いんで?」
「……甲板に大人二人、船底に男三人、他は各部屋から荷物を、ここに運んで。……あと、旦那は止めてくれ。嫁にした覚えは無い。」
「へい、わかりやした、旦那!」
へい、じゃない。何を分かったんだ。
少女と俺の会話?を聞いていた男がシチューを食べながら話に乗ってきた。
少女が一連の流れを多大な偏見と憶測を加えて説明すると、男は客観的な事実のみを捉えて理解した。
この極めて優秀な男が皆に説明すると、少女以外はやる気を出してくれた。
しかも驚く事に、男が壁を押すと回転して小部屋が出てきた上に、中から子供と女性が数人出てきた。
彼等もどうやら仲間らしく、シチューとパンを更に配る事になった。
彼等には修理を任せてる俺は島を出る為の準備を進める。
「『開け』……おお、凄いなコレ。」
小屋に戻ってまず始めたのは遺品の回収だ。
リーラを殺めてしまったのは自分だ。だからこそ、彼女を復活させなければならない。
錬成時のあの拒絶反応がもしリーラのものであるならば、肉体がこの金に置き換わっただけだ。
ならば、彼女が生き返った時に生活する為の物が無ければいけないだろう。
そこでこの背嚢だ。これはリーラが作った物で、中が見た目よりも相当容量がある優れもの。
一度中身を全部出して海へ入れたところ、満潮の海岸線が数メートル後退した事があった程だ。
中に荷物をポンポン入れていくと、小屋はすぐに空っぽになってしまった。
流石に小屋は持って行かれないので放置することにした。
次に魔物の死骸から鱗、爪や牙、骨などの魔術触媒になりそうなものを剥いでいく。
最後に、隊長さん達の武器防具を纏めて【清掃】を掛けて、同じ材質の鋳塊にしてから入れる。
この島を出るのだ、最後に世話になったぶよぶよに挨拶に行く事にした。
「昨日の今日だが、俺は島から出る事にするよ。いや、今日の今日か?」
「KSYAAAA……」
「そんなに落ち込むなよ。俺には俺の、お前にはお前の生き方がある。」
表情はやはり全く分からないが、鳴き声があまり元気では無さそうだ。
「……いつか、リーラを連れて二人でここに帰ってくる。それまで、待っていてくれると助かる。」
「KSYAAAA!!GSYAAAAAA!!」
「おい、どうした?」
俺の一言が余程嬉しかったのか、ドスドスと足音を立てて喜びを表している。
だが突然首をピンと張り、悶えるように震え始めた。
すると、首に段々皺が寄り始めて口から後ろへ剥がれ始めた。このタイミングで脱皮らしい。
五分ぐらいで脱皮を終えると、白かったぶよぶよは皮が薄くなり、その下が見えて肉色になる。
ミンチ肉のような色になったぶよぶよは、俺に取れた皮を口で投げると洞穴の中へ戻ってしまった。
「餞別って事か。何かに使えそうだな。……中の体液を拭けばの話だけど。」