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喪失の神医  作者: Crowley
第四章 少年の入国
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ずっと独りでいるとコミュニケーションの取り方が分からなくなる

「広さの割に部屋が狭いのか。」


一度船を降り全体を見ると、良く分かった。


各部屋がワンルーム程、それが15・6部屋。


厨房やランドリールームを考えても、船体の幅からして中心に明らかな空間がある。


「床を抜くか?……いや、出れるなら入れるか。」


何かが中心から出てきているのなら、入る事も出来るだろう。魔法の存在を考慮しなければ、だが。


しかしどこかから出てきてはどこかへ消えていくなど、そんな魔法をリーラからは聞いていない。


幽霊のような魔物が存在するならあり得なくないが、隊長さん達がそれに気付かないのは可笑しい。


もし在来種の魔物なら住処の移動はしない為、ここ近辺を縄張りとしている筈だ。


しかし、彼等の中に俺と同じ体長の小型かつ二足歩行で動きの速い魔物が居ないのだ。


例え四足歩行だとしても種族の特徴として好戦的な性格の為、逃げ回る事自体が有り得ない。


「存在が容認され、居場所を覆うように部屋が配置される程隔離される存在。隔離されるべき存在。」


様々な可能性が思い浮かぶが、実際に見てみない事にはわからない。


もう一度船内に潜り込み、最下層から中心に向けての壁や床を実際に触れて注視する。


しかし、どこにも取っ手のようなものどころか窪みすら無い。まさか剥がさなければいけないのか。


最も外に影響を及ぼし辛いだろう船首側の最下層の部屋に向かう。


トングをナイフへ変え壁を剥がそうと構えるとその奥、つまり謎の中心部からゴトリと音がした。


誰かが居る事が確定した。確信を胸に、ナイフを突き立てて壁板を一枚ずつ斬り取っていく。


「……やっぱり、居た。」

「ヒィッ……!」


壁の向こうは襤褸布の貫頭衣を着た5、6人の男女がいた。女性は兎も角、総じて線が細い。


「部下、違う。使用人……違う……奴隷か。」

「ッ!」

「大方、サンドバッグってとこか、胸糞悪い。」


枝のような手足に青い痣や、首筋についた深い圧迫痕がそれを物語っている。


俺とさほど年の変わらない少女が大の大人を庇っていたり、一部以外は俺を見て恐れているようだ。


兵士共が出て行ってから帰らない上、子供が壁を壊して侵入してきたのだ、無理もない。


「う、うおぉぉおお!!」

「……勝手に来た不審者は俺の方だったか。」

「ぐぅ……に、逃げ……」


覚悟を決めた少女が遅い足取りで殴り掛かるが、避けてから加減して絞め落とす。


まるで俺が殺しているかのような反応で仲間に逃亡を促さないで欲しい。


少女の特攻に応えるように、周りの仲間達が此方へ一斉に向かってくる。


数人掛かりなら殺れると思っているのだろうか。


俺は彼らの耳のスレスレを狙い威嚇射撃を行う。多少掠っても不可抗力だ。


瞬くマズルフラッシュ、突然の威嚇射撃、立ち上る硝煙。彼等には未知の体験だったのだろう。


どこかの喜劇かのように、皆一斉に腰を抜かして尻餅を突く。


「……外は、魔物、だらけだ。む、無闇に、彷徨くな。」

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