再起
新章始めました。
これからの展望を期待したい。
「GGYAAAA………」
「KISHIIII………」
「CASYAAAA………」
「…………クソッ」
飛竜、蜘蛛ような魔物、蛇のような魔物の断末魔が途切れる。
月明かりが照らす中、向かってくる魔物の柔らかい部位を狙い次々に撃ち殺す。
あれから一週間程経つが、俺はずっとこの調子で魔物を殺し続けている。
心と共に屍を積み上げていても、心にぽっかりと空いた穴の虚しさは消える事を知らない。
一段落して胸ポケットから手帳を取り出して中を見返す。
これはリーラの隠していた日記のようで、泣き疲れて眠った翌日に見つけたものだ。
中には俺とリーラとのそれまでの日常が、詳らかに書かれていて過去を追体験するようだった。
不意に全身の力が抜け膝から崩れ落ちる。全身に上手く力が入らない。
目が覚めてから、俺は一睡もせず何も口にしなかったのだから当然の帰結。
初めて魔力を使った時と同様に、【魔力操作】で操り何とか近くの洞穴まで到達する。
奥からは白いぶよぶよとした魔物が、俺の近くまで首を伸ばして臭いを嗅いでくる。
暫く風呂にも浸かってないからか。俺は人間らしい生活を送る事をやめていたようだ。
「全く……俺は何をしてるんだ。」
彼女の居ない世界なら、リーラの居ない世界なら、もう生きている必要はないか。
てっきり喰われるものだとばかり思っていたが、俺から興味を無くしたように外を見る。
「GGYUOOON?」
「飛竜……幼体か。」
高い鳴き声の子供の飛竜が洞穴の外から此方を覗いていた。
ぶよぶよの魔物は首を伸ばして子飛竜の臭いを嗅いでいると、今度は低い似たような鳴き声がする。
「GGYAOOOO!!」
「KSYAAAA!!」
「GGYAAAA!!」
「GYUOOON……」
親と思しき飛竜はぶよぶよの首目掛けて急降下、そして足で首周りを傷付ける。
意志疎通が為されているのか、親の鳴き声に呼応し、子供はぶよぶよに背を向けて飛び去って行く。
飛竜の力及ばず暫くして、親はぶよぶよに食べられてしまった。
「親、か。」
食べられている親を見ていたら、リーラの日記にも親子について言及するものがあったのを思い出す。
『レイにはそばに居てあげる人が必要だろう。万が一私が死んでしまったらどうするかな。その時に心の支えになる人が居てくれるなら大丈夫。だけどもし居なかったら。あの子はきっと』
日記はここで終わっている。
この後何を書こうと思っていたのかは定かではないが、今の状態はリーラにも予測出来ただろう。
リーラの願いは今際の際に言ったように【レイ】には親が必要だ。
「KSHIIII?」
「うっ……すまないが、今晩は世話になる。」
「KSHISHISHISHI」
……もしかして、コイツは言葉が分かるのか?
2020/5/20 前書きの加筆
章管理の修正をしました