違和感は大事にすべき感性だと思う
お久し振りでございます。
ブクマとかいいねとか評価とか、暫く更新してなくても減らないもんなんですね。……単に忘れられてるだけかもしれませんが。
「そういえば、リヒトは何か用があるんじゃないのか??」
俺かイスカンダル、またこの二人に用がなければ少なくともここに来る必要はなく俺以外とも面識がないはずだ。
「……やべェ、忘れるところだった。さっきギルドの使いが貴族ん家に来て手紙を置いてったんだ。」
そう言って懐から取り出した一枚の紙を受け取り中身を確認する。
相当焦っていたのか走り書きで読みづらい文ではあったが、単語さえ切り取れれば容易に理解できる内容。
「要するに、数十規模の重装歩兵とその他雑兵千程度が下山しているのを確認した。開戦は間もなくってこったァ。」
「重装歩兵か。」
汚い字を読み慣れたリヒトの説明に一つ違和感を覚える。
「雑兵とは言うが、元々寄せ集めの軍みたいなものじゃなかったのか?」
「知らァねェよ。ただ……重装歩兵に関しちゃどっかの正規軍みてェに速ェ進軍速度と、統一感のある見た目って書いてある。どっかのバカ貴族様が私兵でも差し出したんじゃァねェのか?」
徐々に勢力を増しつつある五神教ならばあり得なくはない話ではある。
ただ、このように聖戦を掲げて攻めてくるような集団を国が大人しく放置しているとも思えない。
「わかった、とりあえず合流する。場所は指定されてるか?」
「あァ、あの村だ。俺ァ先に行くぜ、こんな時に足ィ合わせなくてもいいだろォ?」
「当たり前だ。」
「そういう訳なので、この子達はお願いします。」
背中に隠れている二人の頭を撫でながら教官へある程度説明した。
そんな真面目な場面で年の離れた兄弟がいたらこんな感じなのだろうか、と無意味な感慨を抱く。
前世を思い出す度に過去と今を比べるのは俺の悪い癖のようなものだ。
悪い出来事の多かった過去と良いことの無い今を比べたところでどうにもならないというのに。
「ああ、それは構わないがその重装歩兵とやらは気になるな。」
「教官もですか。」
「実はな、とある貴族のご令嬢が奴らの信者だという疑いもある。敵だからと殲滅してしまえばあらぬ恨みを買う事を覚えておいてくれ。」
「……それ機密ですよね、話しちゃ拙いでしょう?」
「それだけ自分の教え子に心配しているということだ。戦場なら兎も角、つまらない政略に巻き込まれれば手出しできないからな。」
「わかってますよ、それくらい。」
グリルに依頼されていた当初よりも速い進軍速度や重装歩兵に違和感を持ちつつも、多くもない荷物を纏めて戦場予定地へ向かった。