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喪失の神医  作者: Crowley
第十四章 新人と希望
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沈没

いつもよりちょっと長いです。

上手く区切れんかったわ。

「【瞬閃】、【瞬閃】、【瞬閃】、【瞬閃】ぃいい!!」

「ハッ、無駄撃ちばっかだなァ?!」


女を煽る。


たかだかこの程度のことしか言えないが、それでも煽り耐性の低いこの女は苦虫を噛み潰したようにしかめっ面をしている。


良い気味だと思いほくそ笑んでふと疑問が脳裏を過る。


何でこの女は目標まで走らないのか、だ。


勿論、自分で出した蒸気で方向感覚を麻痺させたり目眩ましになっているのは分かる。


女があそこへ向かう素振りがあれば俺は見逃すことなく攻撃するだろう。


だが、ここで待ち構えて勝てるほどこの女には余裕がない。否、はっきり言ってあの荷車に向かう他に勝てる見込みはない。


にもかかわらず女は囮を撃ち続けている。何か狙いがあるのか。


「あたしね、分かっちゃったのよ。」

「あァ?突然どうしたァ、遂にイカれたかァ?」

「あんたの囮の防ぎ方。」


単純に囮に邪魔され続けただけらしい。


「……ほォ、そりゃァ俺も聞きてェなァ?」

「【瞬閃】【瞬閃】【瞬閃】【瞬閃】【瞬閃】【瞬閃】」


無数の光が虚空を貫く。光の束を人一人通れる程の半楕円形に並べ描く。


「早ェ話、光でトンネルを作るってェ訳だァ。」

「守備範囲は前後だけで充分になる。範囲さえ分かれば集中して攻撃できるってこと。」

「弱点はてめェの口が回らなくなりゃァそれでおしめェなこと、あとはてめェの魔力次第って訳だァ。」

「ククク、あたしが勝手に失敗するか構わずあたしを殺しに来て返り討ちになるか、我慢比べってことよ。【瞬閃】【瞬閃】【瞬閃】……」


何故か名案のように語る女。煽り耐性のない奴がなんで我慢比べで勝てると思っているのか。


だが、女のしていることは案外悪い方法ではないだろう。


囮を動かす為の核はそこらの金属には負けない程のそれなりの硬度で、大きさは握り拳程もない。


それを的確に撃ち抜ける正確性と破壊力があれば、たとえトンネル内に囮共を殺到させたところで無意味に撃ち抜かれるだけ。


俺が攻めたところで頭か心臓が潰されるだけだ。ただし、()()()()から攻めた場合なら。


「我慢比べって事ならァ少し話をしようやァ。」

「【瞬閃】【瞬閃】【瞬閃】」


一切の返答はしないが、得意気な表情で一つ頷いた。


「見て分かる通り、これァただの藤壺じゃねェ。名前はしらねェが魔物だ。」

「【瞬閃】」


ボロボロの体で一歩また一歩と歩を進める。


「生態は大体似てる。ガキァ漂って仲間のいるとこで成体になる。んで、成体は液体の甲殻を固めて作るってなァとこまではな。」

「【瞬閃】」


その歩みは片足を軸にしたもので非常に遅い。


「だが、一つ違うのは魔物の場合、海水にだけ生息する訳じゃねェってとこだァ。」

「【瞬閃】」


だがその歩みもピタリと止まる。


「淡水だろうが何だろォが生息してやがる。漂うだけの空間さえありゃあなあ。」

「【瞬閃】」


流石、人間に造られただけあって察しが良い。


「藤壺のガキァよォ。背中の一番大きな穴からァ、産まれてくるんだぜェ?」

「【瞬、ガフぁ」


辺り構わず撃ちまくろうとでもしたのだろう。しかし、口内から湧き出るように藤壺が生まれたことで阻まれる。


それだけでなく、全身のいたるところから俺が生み出したモノと同じ藤壺が発生する。


女は藤壺の張り付いた船のように、体の内外問わず生まれた藤壺の重量に耐えきれず崩れ落ちた。


次第に蒸気、藤壺の魔物の幼体がゆっくりと地面に張り付いていき視界が確保される。


「ナメんなァ。クソが。」


地面から顔だけ出しているという、何とも締まらない勝利だった。

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