表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喪失の神医  作者: Crowley
第十四章 新人と希望
150/167

死な不が故の

余裕をかましている婆さんを見ている。


「【召喚】」

「あらまぁ、呼び出せてないじゃない。」

「いや、大丈夫だ。しっかりと見えている。」


正確には呼び出した透梟(クリアオウル)のクーの視界を借りて、空から見下ろしている。


身代わりが光の屈折を利用したものなら、俺からの目線だけしか誤魔化せないはず。


この場にいる全ての人間を誤魔化せる程の使い手なら、ドッペルゲンガーの後ろから見ていた俺が誤魔化されているはずだ。


もっと言えばより早い段階で俺たちを殺せていたはずだ。


「愚痴ばっかでもしょうがないな。リヒト!」

「あァ?問答は終わったかよォ。」

「婆さんを捕まえられるか?」

「……使い魔殺られてェ、何かまだ打つ手があんのかァ?」


自分の何倍もあるガタイを見上げる。


正直なところ、彼に全力を出してもらった意味はない。強いて言えばこの存在感に威圧されてほしいという希望的観測だけだ。


彼をうまく活かしきる事ができず、挙げ句に手駒が減るのはいたたまれない。


「ない。ただ、捕まえられるか否かじゃ大きく違う。」

「そォかよォ。」

「ククク、さっき全然追っ付けやしなかったのにかのふぶッ」


婆さんが弾ける。下手人はリヒト。いつの間にか消え失せた藍羊巨猿が、元の姿へと戻り婆さんの頬へ裏拳を叩き込んだのだ。


「だァれがノロマだってェ?クソビッチがァ!」


元に戻ったというには下半身が少々歪で、姑息そうな顔立ちも相まって悪役っぽさが際立つ。


「ハッ、ありゃァ少し力み過ぎちまッただけだァ。舐めてんじゃァねェぞ、クソがァ!」


打ち据えた裏拳が婆さんの血を滴らせる。


「てめェに指図されるほど俺ァ弱かねェ。そんなんだからてめェの使い魔も死ぬんだ。」

「それはすまなかった。だが」


左手をだらりと脱力して掌に影を作る。影はうっすらと蠢いて袖の内側へ消えた。


「死んじゃあいないぞ?」

「あァ?」

「完全体には程遠いしこれじゃ赤ん坊にすらなれないが、まだここに生きてる。アンデッドだがな。」


ドッペルゲンガーは霧状の魔物だ。影から人間を写しとりその存在を模倣する。


霧状であるが故にどんな大きさでも構わないし、霧状であるが故に切り分けた()()も本体である。


「自己増殖もしないから元には戻らないし、意思の疎通も難しい。ただ、契約しているだけだがな。」

「……面白ェ種族だな。」

「面白い、か。それは確かだが、婆さんもだな。」


飛ばされた先では、右頬が陥没して右目が零れ落ちそうな血だらけの若い女性が満身創痍で立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ