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喪失の神医  作者: Crowley
第十四章 新人と希望
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藍羊巨猿

新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

さて、Twitterの代わりにこの場でご挨拶させていただきました。

七草粥って味薄いんですね。

「あ、ああ。只今参ります。」

「ったく。爺さんが馭者台で死んでんのかと思ったわ。」


慌てて取り繕った爺さんに、何も気付かず軽口を言って待っている兵士。


この場所からは見えないが税金やら何やらのやり取りをした後、爺さんはそのまま馬車を進めようとする。


「ちょっと、何勝手に行こうとしてんの。」

「えぇと、いや、もう終わりでは?」

「いやいや、何のための検問だよ。荷車もお客も全部確認するからな。」


兵士の歩く音が聞こえた。しかし、リヒトがその場で兵士が入ってくるのを待っていても、一向に扉が開く様子はない。


「あ?これは?」

「後ろもつっかえてることですしぃ、あなたも仕事は早いほうが良いでしょう?」

「あのなぁ。」

「ほらぁ、あなたもまだお若いでしょう。何かと入り用でしょうし、それよりこぉんなところで躓いてはいけねぇ。」


賄賂を渡しその仕事を止める算段のようだ。


しかし、タダで受けとる兵士でもなかった。


「じゃ、後ろだけでも見るとしますかね。」

「んなご無体な。」

「んな危ない橋渡んのにこれっぽっちか?」

「しかしこれ以上は……」

「前と後ろのどっちかなら良いぞ。」


高圧的に選択を迫る兵士に対し爺さんはうんうんと唸って、最終的には前でと呟いた。


「ふん、それでいいんだよ。じゃあ、開けるぞ。」

「ははぁ。」


その声の後、客車の扉が開いた。


兵士はこっそりと俺とリヒトの手に少し歪んだ硬貨を握らせ、聞こえてたら黙っててくれ、と片棒を担がせる。


そして、完全に頭に血が上っているリヒトを宥め、兵士を次の馬車へ早々と向かわせた。


爺さんも気が短いのか、殺意をその顔面に滾らせていたからだ。あと少ししていたら兵士は多分殺されていた。


「リヒト、硬貨を。」

「チッ、さっさとしろや。」

「はぁ。」

「ったく……爺さんは馬鹿なのか?」

「いんや、挑発に弱いだけだぁ。」

「ハッ、工作員としてァ致命的だなァ。」


渡された硬貨を確認する際、リヒトが思わず発した軽口に、流石に呆れたのか婆さんが応じる。


「ただァ、一度茶々が入ったくれェで何ら状況が変っちゃいねェ。分かってるよなァ?」

「チッ」

「装うこともしなくなったな。」


確かに変化はないように見えるだろう。


しかし、硬貨に描かれているのは帝国の通貨に描かれるものではなく、俺がよく知っている家紋だった。


「リヒト。」

「あァ?」

「暴れても良いらしいぞ。」


何の脈絡もないその一言でリヒト目の色が変わる。それも文字通りの意味でだ。


「突然言われて何の事か知らねェし」


リヒトの全身が筋肉で倍以上に膨れ上がり肌色が青黒く染まる。


「てめェの指図受けんのも癪に障るがァ」


隆起した筋肉には動きを阻害しない程度の甲殻と全身を覆う体毛が形成される。


「ブッ潰してもいィんなら、そうすらァ!」


羊のような頭のをした異形の怪物が、客車を破壊して咆哮した。

今後とも拙作をよろしくお願いいたします。

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