表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喪失の神医  作者: Crowley
第十三章 新人と精霊
140/167

交差する思惑

「んー、了解。返事は?」

「はい、受諾しましたね。会談は時間的猶予を鑑みて双方の使い魔を通して話し合おうと。」

「戦場は?」

「予測ではフォルトナ山付近の平野になるのだそうですね。」

「わかった。ま、とりあえずリヒトを連れてきて。今正門前で拗ねてるから。」


了解と答えた男は頭を抱えながら出ていった。この傭兵団の中では恐らく中間管理職なのだろう。


フォルトナ山とは現在、五神教の総本山にされてしまった山の事だ。


地図によればフォルトナ山より北には海しかない。また南部から南西部にはグラスコ砂丘やエディンがあり、南東部に件の平野がある。


しかし、そこには一つ問題がある。


「あの辺りには村があったはずだがそれでも開戦するのか?」

「んな訳ねぇだろ。あの一帯は帝国の決戦場だぜ?不死者(アンデッド)ばっかで人間なんて住めやしねぇ。」

「いや、あの辺りに孤児院と小さな村があったはずだ。」


元気な子供のいる孤児院がある。カスパールと再会したあの教会がある。


「何を根拠に……もしかして、知り合いが居たりする?」

「孤児院の運営者だ。それに、リリアが向かった。」

「……拙いな。率いてる軍人によっちゃあ勝手に住んだっつって殺しかねねぇ。」


何故守るべき国民を殺すのかと疑問に思ったことが分かったのか、グリルは苦虫を噛み潰したような顔を俯かせ話す。


「何十年振りの戦争だ、過激派共は興奮してるだろうからな。まともな倫理観してるかどうかも怪しいな。」

「流石にそれは」

「お前に帝国軍の何が分かる!……すまん、八つ当たりだ。」


あまり良い思い出がないらしい。それもそうだ、帝国軍に攻め滅ぼされた国の人間だったのだから、元とはいえ敵軍の事を良く思わないだろう。


「いや、俺の浅慮だ。気にするな。とはいえ村があることくらい知らなきゃおかしいだろう。第一、彼らだって税の徴収くらいは受けるはずだろう?」

「それもそうだな。なら何故?いや、まさか。」


それきりグリルは黙り込み長考し始める。険しかった表情は次第にほの暗い笑みに変わる。そして気が触れたように声をあげて笑い始めた。


「ンフフフ、フフフハハハッ、アッハハハハハッ!」

「どうした?」

「いんや。あいつらお国の危機だっつうのに、政治的な案件まで片付けようとしてやがる!」

「なるほど、敵対派閥の排除か。随分と余裕なんだな、過激派が負けたら終わりなのに。」

「……ああ、そうだよな、普通。」

「他に何かあるのか?」

「何でもねぇ……作戦としちゃ大方、勇者とやらを投入して一発逆転て腹だろ。馬鹿だよな、相手は何しても自由っていう教義で動いてる奴らだぜ?どんな搦め手で来んのか分かりゃしねぇっつうのによ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ