襲撃に対する対処法は冷静に状況を飲み込む事が一番だ
「エクリプス帝国軍仮称ロスト島制圧作戦支隊隊長です。何しに来たかは分かるでしょう?なので、名乗る事はしませんよ。」
ドクン、と鼓動が全身に共鳴するように聞こえた。
制圧作戦。その言葉に反応し、リーラの影に隠れ弾倉を入れ遊底をスライドする。
「そんなものは要らぬ。何故此処に来たのだ?」
「数千年も前に消えた帝国領内の島で、何故か突如として莫大な魔力反応があった。それも二度。何も知らない我々が何かの前触れかと不信に思うのも、当然な事と思いますがねぇ?」
「……それは妾やこの子が原因じゃな。」
装填数は12、標的は約30人弱、制圧の為の少数精鋭特別部隊。魔法は魔力を気取られれば反撃されるからナンセンス。
近接武器無しで殺りきれるだろうか?いや、あり得ない。仮にも精鋭なら二人でどうにかできるとも思えない。
そして無駄に頭が冴えている今、不自然な点に思い至る。
「……何故制圧なんだ?」
「どうした?少年。」
「何故探索ではなく制圧なんだ?」
「ほう。」
何故探索ではなく制圧なのか。
何らかの危険があると予想されるのであれば、余程の暗君でなければ制圧よりも先に探索だろう。
だとしてもだ。制圧しに来るならばこんな軽装備じゃないはずだ。
さっさと葬れば良いものを、要らない所で頭の回転が早くなっていく。
「つまり、お前らは俺達が此処で生活してる事、さほど文明を拓いてない事を把握してるんだろ?」
「おやおや、その年にしては良く頭の回るボウヤだ。」
死の這い寄る気配が肌を嬲る。
「総員、やれ。」
男の指示する声と同時、リーラは【無槍】を四人へ放つ。俺は男の後ろ四人の眉間を撃ち抜く。
仲間の頭が吹き飛んだ事に意を介してないのか、想定外の伏兵を気にしてか周囲を警戒している。
まさか、銃火器が存在しないのか?いや、魔法が発達しているなら其方の方が便利か。
「二人だけだと知って余所見をするか?」
リーラが要らぬ挑発をするせいで知らない事を利用できなくなった。まあ、信用する方もする方だが。
リーラの【無槍】を各々魔法で防ぎつつ、此方へ槍投げ、矢を射るなどで反撃される。
此方への攻撃は全てリーラ一人で守ってくれているが、【無槍】で攻撃しても水や風の壁に阻まれて埒があかない。
「おやおやぁ?先程までの威勢はどうしたんですかぁ?」
水の壁の向こうから男の嫌らしい笑みが歪んで見える。
防戦一方。それでも俺とリーラは着実に一人、また一人と数を減らす。
男は部下が両手で数えられるほどに減ってもなお、余裕の笑みを崩すことはない。いや、若干だが口角がひきつっている。
「少年、女性を盾にして恥ずかしく無いのか?」
「戦場では生存が最優先だ。それに……リーラの防御は抜かれない。おんぶに抱っこで恥ずかしいのはお前だろ?」
「これは連携というものだ、決して部下に任せきりな訳じゃない!」
「はっ、口が回るだけで手が疎かなら連携とは言わんな。」
早口になって激昂しているのが図星である良い証拠だ。