実際他人の空似って恐ろしいところあると思う
「すまねェな、いつもの事だから気にしねェでく、らァ?!んでてめェがいんだ!!」
奇妙な姿の男は俺を見て驚愕を表し、そして仲間を殺した張本人と同じ顔──といっても向こうが模倣しているのだが──を見て沸々と怒りが再燃しているようだ。
「団長、これァどういう事ッすか?」
「仲間に加えようって考えて、話したらこいつも承諾した。そんだけだが?」
「そんだけだが、じゃねェッす。」
ドッペルゲンガーは影を伝い耳の裏で自分が出て憂さ晴らしさせようか、等と魔物にしては気の利いた事を言う。
しかし、グリルを見ればその必要はなさそうだと悟った。
「こいつァあいつらをぶッ殺した男だ!それは俺も兄貴も」
「リヒト。」
一言だった。
激昂する彼はグリルのさほど大きくもないたった一言で、リヒトと呼ばれた青年は押し黙った。
「俺の地元にはこんな言葉がある。撃っていいのは撃たれる覚悟がある者だけだ、ってな。」
「んなこと今」
「死んでいった奴らが撃たれる覚悟のねぇクソ野郎共だとでも思ってんのか?俺を失望させるなよ。」
道端の石ころに向けるような興味の無くなった眼差しを向けられて、リヒトはこの世の終わりかのような悲壮感を出す。
「だん、ちょ」
「まあ、撃つ撃たねぇっつったってわかんねぇだろうけどな。」
「殺す殺されると言い換えれば良いだけだと思うが。」
「おぉ、さっすが。分かってるぅ。」
妙に馴れ馴れしいグリルとそれをあしらう俺の二人を見て、涙目だったリヒトは消沈したまま店主に担がれる。
廃都に向かう四人をどことなく気まずい雰囲気が包み込み、精神的な疲労感と共に彼らのアジトに向かった。
「たでぇま、っと。」
アジトは廃都の入り口の門から少し進んだところにある酒場を利用したところにあった。
西部劇に出てきそうな両開きの小さな扉を抜けた直後、グリルは右手にあった大きめのソファにダイブする。
そんなグリルのだらしない行動の物音を聞き付け、奥から仲間とおぼしき男が出てきた。
「団長すまないね、リヒトを止めら……護衛をしていた者が何故ここにいるね?」
「お前もリヒトと同じことを言うつもりか?」
「はぁ、やっぱり突っかかったのかね。あいつに代わって謝罪するね。すまなかったね。」
「いい。実害はなかったからな。それよりもグリルに用があるんじゃなかったのか?」
「そうだったね。ありがとうね。」
頭を上げると、倒れこんだグリルのソファの向かいに座った。それをグリルがチラリと目を向けると、彼は咳払いをして用件を伝える。
「先程、使い魔を通して帝国軍より依頼がありましたね。『聖戦にて貴殿らには傭兵を率いて遊撃部隊として要所を落として欲しい。指揮系統はそちらに一任するが詳細は後日説明する。』とのことですね。」