墜落系ヒロイン……?
魔法都市国家エディンの南西部に亡国の廃都がある。
さほど大きくは無い件の都はその昔、エディンが属していた国の首都だったらしい。
小国でありながら精強な軍事力で何十年もの間帝国の侵略をはね除け続けるも、遂には突如としてその都を滅ぼされ終戦に至った。
「そんで廃墟だらけのこの街に陣取ってるってワケ。」
「縁起悪いのによくもまあ平然と住めるな。」
「ハッ、亡国民の愛国心舐めんなよ?幾ら地下道に魔物が湧いてようが、野生のアンデッドが彷徨いてようが、母国見捨てられる訳ねぇだろ。」
「なるほど。おめーはあンがい、かンしょうてきなのはよーく分かった。」
「流石精霊さんだね。道理で団長が手を焼くわけだね。」
そうグリルから説明を受ける。馭者は魔道具を売っていた店主だ。やはり彼らの団員だったらしい。
からかう二人に顔を赤くして不貞腐れて窓の外を眺める。これ以上関わらない構えだ。
「──ッ!」
「何か聞こえないか?」
「なンだ拗ねたおっさンの次はかまってちゃンか?」
「違う。」
小さくてよく聞こえないが若い男の声のようだ。小窓から視線を巡らしても誰も見当たらない。
「──ょーッ!」
「あ、聞こえたな。」
「んー、坊は元気だね。」
坊とは何なのか尋ねようと思い窓から顔を馭者に向けたその時、屋根からズドンという大きな衝撃と共に何かが墜ちてきた。
衝撃に驚いて馬は逃げて、床板までぶち抜いて墜ちてきたソレのせいで土煙が舞う。
「おかえり、団長!」
「ゲホッ、ゴホッ、馬鹿、てめぇ何してんだね!」
「あァ?団長をお迎えにあがったに決まってんだろォが!」
馭者の激昂に応じるように、背に生えた一対の翼をはためかせ男は咆哮する。
土煙から露になった男は当然ながら俺の知らない男であった。
細身でありながら鍛え上げられた身体には無数の傷痕が残り、スラックスだけを身に付けた変な格好にその翼も相まって、悪魔のような姿だ。
奇妙なのは翼だけではなく、その象のように太い脚には金属光沢が見受けられ二振りの金槌のようにも見える。
「お客さんも居るんだぞ、死んだらどうするつもりだったね?!」
「はァ?!だったらそれをさっさと言いやがれクソが!」
「完璧にお前が悪い。」
「団長ォ?!」
裏切られたような顔でグリルを見る男。話を聞く限り彼はグリルの傭兵団の生き残り。
「すまねェな、いつもの事だから気にしねェでく、らァ?!んでてめェがいんだ!!」
そしてドッペルゲンガーの俺と戦ったという因縁のある?男だ。