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喪失の神医  作者: Crowley
第十三章 新人と精霊
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メリット

お久しぶりでふ。消えた大筋を書き直しておりました。

今回は少し長いでふ。

言いあいは膠着状態に陥る。


お前のせいで仲間が無駄に死んだのだからその分を償え。法を犯してまで追ってきたお前が悪い。


そんなことを話し続けるにしても、ずっと森の中なのは些か場違いな気がする。


「てかよー、おめーはなンででこいつに固執すンだ?」

「だからそれはこいつが仲間を」

「ンな建前はどーでもいーンだよ。かンじンなのはその裏だ。おめーもぼーろンだって気付いてンだろ?」


精霊の一言で事態は大きく変わる。暴論なのはその話に裏側があるから。


となればその裏側とは何か。俺が居ることで得られる利益があるのか、それとも俺がその場に居ないことで発生する損失なのか。


「……はぁ、本当は話したくねぇんだよ。顧客っつーか顧客になる人っつーか。」

「不利益をこーむるなら、今この場で話さねーでこいつを得られねーほーが不利益なンじゃねーのか?」

「わーったよ、話しゃいいんだろ?」


顧客との間に不利益を被る。俺には守秘義務以外では思いつかない。


それでは何を守秘するのだろうか。傭兵が必要なこと、と言えば荒事ぐらいだろう。探し人やらそんなことは探索者が引き受けるだろうし。


荒事となれば考えられるだけでも大きく絞られる。護衛、襲撃、今回のような誘拐と、おおよそ力で解決できるものばかりだ。


「最近、護神教の総本山だったところに五神教が陣取ったらしい。んで、これからはそこを五神教の総本山とするって声明が出た。」

「それだけなら別にこれにはむかンけーだろ。」

「ああ。だが、その声明文には続きがあってな、帝国に進軍するんだと。色々御託を並べちゃいたが奴ら曰く、『聖戦』だとよ。」


……案外、予想よりも遥かに越えた荒事だった。


しかし、問題は山積みだ。何故傭兵が聖戦とやらに付き合ってやらなきゃいけないのか、という問題以前に。


「戦争は頭数だろ。団員大多数か俺一人なら、俺を一人入れたところで大した戦力にはならんだろ?」

「ハッ、お前自分を少し過小評価しちゃいねぇか?」

「過小評価?」

「ああ、小鬼王を殺れたんだってあの場に居たお前のサポートありきだろ。あれがなきゃ全員今頃奴の腹ん中だ。いや、もう糞になってっかも知れねぇな。」


表現は汚いが恐らくそれは事実なのだろう。少なくとも、中立である精霊が何も指摘しないのが良い証拠だ。


グリルは頭の後ろをガシガシ掻きながら面倒臭そうに続ける。


「話を戻すが、俺の言う顧客ってのは相手になる帝国だ。当たり前だがな。」

「それで?」

「向こうに渡る鉄やら聖銀(ミスリル)やらが尋常じゃねぇ。なら、帝国軍がもしかしたら俺ら傭兵にも援助要請してくるんじゃねえかってなふうに俺は考えてたわけさ。」

「かンがえてた?」

「ああ。声明文は最近だが、輸出入の話は独自に仕入れた情報だ。帝国軍に安く売って義勇兵のまとめ役として利権回りを牛耳るつもりだった。だが、そこにきて状況が変わった。仲間は大半が死に、お前という存在が現れた。」


観念したように深くため息を吐くと、始めの勧誘のように真剣な面持ちで話す。


「お前というカードが手に入れば情報を安く売る必要が無くなる。その上お前の実力があれば、大将首を仕留められる筈だ。報奨金は傭兵団として受け取るわけだから建前上全額って訳じゃないが、でも取り分はお前の圧倒的な有利にはできる。」


この通りだ、と深々と頭を下げる姿は、例え大きくなくとも組織の長が見せて良いものではない。


「……特に、金には困ってない。だから、俺にはお前に付くメリットがない。」


そんな同情を買えそうなシチュエーションだが、俺が今出せる答えはこれ一つだけだった。

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