友達の友達は友達とは限らない
外套をくまなく観察する。予想が正しければどこかにあるはず。
「……グルだったか。」
目的の物は外套の内側下方にいた。てんとう虫が、ソレに似た粒ほどの金属だ。外套からではない魔力が感じられる。
俺を追ってきた爺さんはこれを買った魔道具店の店主と同じ語尾、というよりは同じ訛りを持っていた。
たかが同郷というだけで疑うには些か早計すぎるかと馬車に乗っていた時には考えていたが、落ち着いてから改めて考えれば不自然な店点はまだあった。
それは、何故洞穴の場所が分かったのかだ。捕まる前提で動いていたとはいえ、あの段階で見つかるとまでは思ってもみなかった。
まさか、と考えて外套を見てみればそのまさかだった。
おそらくこれは発信器のような効果をもたらす魔道具だろう。
それを身に付けて、あまつさえ寝ている時も側に置いていたのだから、向こうからすれば相当な間抜けに写ったことだろう。
「お陰で想定より早く事を済ませられたのだから、結果オーライというやつだな。」
小さな魔道具をポケットにしまいつれられた道程を思い出す。
馬車に掛かった遠心力や坂道の重力の向きから、現在地の推測だけは出来るが正確な位置までは分からない。
「とりあえず森から出るしかないか。」
彼女、リリアとドッペルゲンガーの二人?の待つエディンに到着できるのか思案しながら森をさ迷う。
獣や鳥の鳴き声や遠くで聞こえる魔物の唸り声だけが聞こえ、いくら見渡しても木々が見えるだけ。
地面は馬車の轍さえ見えないような鬱蒼とした草花。もはや森というより樹海と言った方が正しい気がする。
揺れる茂みに警戒しつつ歩いていけば小動物すら居らず、ただ風が吹き揺れただけ。
「遭難、だな。」
「そーなンだ?」
「ああ……ッ!?」
まさかの状況に(よく知りもしない森を歩き回っているのだから当然である)そう呟くと隣から声が聞こえ思わず相槌を打つ。
先程まで気配すら見せなかったその声の主から咄嗟に飛び退く。
ボサボサでくすんだ緑の短髪に、乾いた泥で白くなった小麦色の肌、血潮が如き赤い双眸、黒や緑を基調とした何処かの部族のような衣服。
「おめー、なにもンだ?」
「……レイ。探索者で、傭兵だ。お前は?」
そして何より頭に付いた二つの耳と腰周りから生えた尾。ピョコピョコと動く耳と尾は統一感がなくどちらも違う動物のもの。
「おめーのせーで、勝ちのメもねーじゃねーか。」
「何?」
訳の分からない事を話続ける少女。こちらを睨み付ける眼光は鋭さを増しながら、眦に粒を浮かべる。
「なのに、なンでそンなにあったけー匂いすンだよ!」
「何の事だ?」
「なー、リーラ!答えてくれよ!」