変態にも五分の信念
難産。視点は変わりません。
「これはこれはリリア様、まさかあなた様からお呼びいただけるとは。」
「どうやら貴方は護神教を実質的に解体したようだし、いくつか質問に答えて。」
「ええ、何なりと。」
ソファーで侍女らを部屋から追い出して一人で紅茶を注いでいると、呼び出した男がやっと到着した。
厭らしい笑みを浮かべながら受け答えするバルゴレは、正面に座って私が淹れていた紅茶を飲み始めた。
「一つ、私に巫女としての役割はもうないよね?」
「ええ、勿論。おやおや、茶を淹れるのが上手くなられたようだ。」
「二つ、貴方は何者なの?」
「私はとある同名の教会の使いです。ふむ。茶菓子は何処だかな。」
「三つ、何が目的だったの!」
「異教徒の排除です。ありました、リリア様も召し上がりますか?」
暖簾に腕押し、その言葉がそっくりそのまま当てはまるように、いくら語気を強めても飄々と受け止めている。
「私はねぇリリア様、異教徒の造り上げた妄想を解体しろと命じられてここに入信しました。だがその命令すら守れていないのですから滑稽なものです。」
「どういうこと?」
バルゴレの言葉に耳を疑った。
ここまで解体しておいて守れていない?とてもじゃないが信じる気にはなれない言葉だ。
バルゴレはカップとソーサーを持ったまま立ち上がり語り出した。
「五神教は自由なところです。敬虔な信者であればあるほど他人を巻き込んでいける、所謂カリスマ性を持った人間と持たないクズが上に立つ。」
「貴方は絶対に後者ね。」
「ええ、それは自覚しておりますとも。中には自傷行為に快楽を覚える者や身近な人を目の前で殺す事を趣味とした者もいました。私の場合、それが色欲に忠実だった。」
「どちらにせよ褒められた行為ではないわね。」
「そんなクズが手を出すまでもなく、ここはもう崩壊寸前だった。一人しかいない枢機卿の座に、教皇が死んだにも関わらず一司教ごときに傀儡にされた無能な枢機卿。そしてその司教さえ第三者に襲撃を受け手下諸共消滅した!」
立ち止まったバルゴレはカップの中身を一気に呷り息を整える。
深呼吸した彼はベッドに腰かけて私を見て話続ける。
「解体する価値もなかった。解体するまでもなく崩壊しかけていたのだから。」
「それは」
「人心の最後の拠り所であり同じものを信ずる者どもの家、それが宗教というものだ。内部抗争何ぞで瓦解するようなものは、もはや宗教とは呼べない。」