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喪失の神医  作者: Crowley
第十二章 新人の反撃
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忘却という暴虐

視点は変わりません。

「お久し振りでございます、リリア様。」

「……バルゴレ、最悪よ貴方。」

「はは、小鳥の囀りのようなお声で罵ろうとも可愛らしいのはお変わりないようで。」

「気持ち悪い。傭兵まで雇って、そこまでして私をどうにかしたかった訳?」

「ははは、美女を愛でる事は私にとって人生も同義ですので。お前たち、部屋へ連れて行き私の準備が終わるまで話でもしていなさい。ああ、手錠だけは外すなよ?」


そう言い放ったバルゴレは数人の侍女を連れて廊下を歩いていった。


私を見て美女だと宣う男に呆れながら侍女達に広い部屋に連れられる。


初対面の人しか居ない彼女らから察するに、お偉方はここには居ないかそもそも消されたかされたらしい。


部屋は薄暗く大きなベッドが一つあり、壁の隅々によくわからない器具が引っ掛けられている。


「性欲の塊ね。」

「ふふふ、貴方も彼に見初められたのね?」

「……は?」

「お金もあるあんな美男子に抱かれるのに、どうしてそう嫌がるのかしら?」


バルゴレが美男子?ありえない。団子っ鼻にニキビだらけで凸凹とした顔。見るに堪えない歯並びと禿頭に、極め付きは肥満と体臭である。


とてもじゃないが美男子とは言えない容姿である。


「……洗脳、ですね。」


彼女らの瞳は光がなく、とてもじゃないが正気とは思えない。


正気を取り戻したとしてもまた違う意味で正気ではいられないかもしれない。


それならば狂気のままでいるのも正解なのかもしれない。


「どうかいたしました?」

「いえ、何でも。ところで、他の信者達はどこに?」

「さあ?でも、エリックさんやディエゴさんのような、地方へ向かった敬虔な信徒たちは布教活動をしに行ったとか。」


確定した。彼女らは洗脳か記憶の改竄を為されている上に、私たちを殺しに向かわなかった人達はもう二度と会えないのだろう。


私達、護神教の教えには『人は三度死ぬ』というものがある。


一度目は体の死。心臓が鼓動を止め肺が呼吸を止める、いわゆる通常の死。死体を燃やすなり埋めるなりして埋葬するアレだ。


二度目は魂の死。不死種(アンデッド)にはならず魂が自壊する、いわゆる本当の死。他の宗教ならば生まれ変わりとなる一つ手前だ。


三度目は他の死。誰からの記憶からも喪われてしまう、いわゆる存在の死。誰の記憶にもないのなら存在していない事と同じ。


「私達が彼らを殺したんだ、責任の一端は私達にもある。でも、こんなことが許されていい筈がない。」

「わっ、びっくりした。突然どうしたの?」


私──いや、俺は殺した奴の顔は誰一人として忘れたことはない。それが殺した者の責任だ。


「バルゴレを早く連れてきて。」

「あら、靡く気になったの?」

「嫌なことはさっさと済ませたいだけよ。」

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