死闘
視点が変わります。
「ふっ」
右から迫る女の振りかぶる剣を弾き、返す刃で喉元を掻き斬る。
腿に飛んでくる矢を受けながら倒れた男の剣を奪い取り、投擲して脳天をかち割る。
「チッ、化物かよあんたァ!」
姑息そうな顔をした男がそう叫びながら、死に伏した同胞の剣を拾い上げ走り迫って来た。
女を男へ向けて蹴り飛ばし時間を少し稼ぎ、背後を襲う槍を引っ張り持ち主の頭を逆手に持った剣で貫く。
「クソがッ、死人を盾にしやがって!」
「仲間だった者をも両断した、お前には言われたかないがなっ!」
そのまま奪った槍で男の激しい剣撃を打ち払う。
彼の動きに合わせて放たれた矢を肩と頬で捕まえると、咥えたまま槍で剣を突き続ける。
「無駄に強ェな!兄貴っ、女擬き探しは頼んだ!」
「始めっからそのつもりだね!」
「ぎゃぁあ!やりやがったなクソがァ!」
「目ぇ離してっからだね、集中しろ馬鹿野郎!」
一瞬会話に意識を逸らした男の眼を口で飛ばした矢で潰したのだ。
流石に慣れない槍では受けきれなくなり、半ばで叩き折り二刀流の要領で手数を増やして攻撃する。
男の突き出す剣が左肩を刺し、右手に持った槍の穂先で男の左耳を斬り飛ばす。
体勢を立て直す為に離れようとする男に、力が上手く入らない腕を振るい鞭のように顎を叩き付ける。
叩かれた事を利用し勢いに乗って飛び退いた男に、槍の残骸を投げつけて両手を剣に持ち替える。
動かしづらい左手と剣を錬金術で結合させて固定したのだ。
そして示し合わせたように互いに向かって駆け出して、鍔競り合いを始めた。
「あんたイカれてるぜ、間違いねェ。」
「ハッ、それが俺の命令だからな。」
男の繰り出す剣はどれも致命を狙っており、また関節を狙うものも少なくない。
守りに徹して勝てるほど甘くはないが、また守りを捨てても勝てるとは言い切れない。
対して俺の振るう刃は致命よりも消耗を狙い、手数の差で肉を切り裂いていく。
新人探索者に毛が生えた程度の腕前ながら、単純な力の差で圧しきられかねない。
そんな二人に次第に横槍を入れてくる敵も居なくなり、時折飛んでくる矢もたかが知れている。
男を中心に様々な方向から攻め立てて足さばきで模様を、魔術式を描きあげるが男はそのあまりの集中力に周りが見えていなかった。
「【形成】。」
「なッ!」
俺は踏み込んだ男の足下に適当な大きさの石を作り男の体勢を崩し、そこにできた大きな隙を突き頸を刎ね心臓を貫いた。