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喪失の神医  作者: Crowley
第十二章 新人の反撃
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ありがちな罠

『その時』は予想より少し早く訪れた。


剣を買った二日後の晩、窓の外からこちらの様子を窺っていた彼が見えなくなった。


完璧に隠れられているとかそんな話ではなく、街の外に向かっていくところを目撃したのだ。


足早に去っていくものの人とぶつかって衛兵に呼び止められてしまう程には間抜けな追っ手だ。


まず、街に入る前に殺した追っ手の視線が分かりやすかった。顔が見える範囲に居たのもボア教官ならば減点しただろう。


次に尾行も下手だった。幾つも店に入るだけで撒けてしまうのだから相当なものだ。


その上今回の追っ手だ。雇った人間の能力もまともに把握できていないのだろう、指揮官失格だ。


「少なくとも貴女の幼馴染みの弓使いは彼らよりも巧妙だった。」

「殺された相手に褒められるなんて、とても光栄な事ですね。」

「皮肉は後に。今はまずこの国を出ます。」


滞在日数もこの国での思い出も殆ど無いに等しいが、今はそんな事を考えている状況ではない。


街中で手を出してくる程馬鹿とは思いたくないが、決して有り得ないことはない。


「おお、お二人さん。もうご出国ですか?」

「ああ、友人が轢かれて危篤だと連絡が。」

「それはいけない、さっさと向かいなさい!手続きは私が代わりに進めておきますから。」

「ありがとうございます。」

「何故こうも息を吐くように」

「行きますよ。」


口走りそうになった彼女の手を握って門から走り出し、門を出た所でドッペルゲンガーと二手に分かれる。


門を出られれば後はこちらのものだ、恐らく予定通りに事が運ぶだろう。




遮蔽物のない砂丘までは少し距離があり、それまでの間には少ないが木々が生い茂っている。分かりやすく隠れられる場所というわけだ。


「居たぜ、ガキ一人と女一人だ。」

「俺達は依頼があってそこの女に用があるんだがね、大人しく渡しちゃくれないかね?」


林を抜けようとすると、姑息そうな細身の男と丁寧な物腰のガタイの良い男の二人組が、前後を挟むようにして現れた。


「……とは言ってみたが、どこか変じゃないかね?」

「ハッ、気にしすぎだぜ。おいガキ、さっさと兄貴の言う通りにしろ。」


どことなく、島を襲った部隊長と近い力強さを感じる。


「これでも俺は護衛なのですが。」

「こっちだって依頼で来てるんだ、交渉で終われるのならそうしたいね。脅すようだが新人でも戦力差ぐらい分かるね?」

「確かに、それぐらいは分かります。」


気配を探れば周囲には少なくとも十五人は隠れていそうだ。


探索者にしろ傭兵にしろ、如何なる仕事でも新人というものは経験も実力も足りないもの。その上一対多となれば敗北は必至。


「なら、さっさと引き渡してほしいね。」

「それはできかねますね。」


だが、それは通常の場合だけだ。ありがたいことに俺は普通とは異なる。


「……チッそうか、この女、偽者だね。」


策に掛かったと感じニヤリと笑みを浮かべ、俺は二本の剣を引き抜き足止めを開始する。

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