6.後処理
「おおー、ずいぶん派手にやったなあ。これじゃあ、血の匂いを嗅いだ余計なやつらも来ちまうぞ」
アロンが戦っている間、座ったまま一切動くことのなかったリヒトが声をかける。
あれだけ血が舞ったにもかかわらずリヒトの周りだけ一切汚れていない。
「……悪い。胸糞悪いものを見せてしまったな」
「別にこれくらいなんともねぇよ」
「死体の処理はこれからやる。すぐに終わるからまあ、獣も来ないだろう」
アロンは剣を振るい炎を出すと死体を燃やし始めた。
幾分もしないうちにそこには血すらも残らずきれいになった。
「さっきの奴らをそんなに簡単に殺れるならなんでお前、あんなボロボロだったんだ?」
「あいつらは聖書持ちじゃないからな。聖書持ちでなければ俺は殺せない。まあ、お前も知ってる通り俺は聖書持ちの奴にやられて死にかけてたからな。死にかけの俺なら捕らえることはできると踏んだんだろ。そして、俺を聖書持ちの奴の前に引き摺って行って止めを刺してもらおうと思ったんだろうな。まあ、リヒトのおかげで俺はこの通りぴんぴんしてる。あいつらの当てが外れたってわけだ」
「その聖書持ちが自ら追ってこないところを見るとずいぶんあっちにも手傷を負わせたみたいだな」
「ああ、俺もタダでやられてやるほどお人よしじゃないからな。
それよりも、早くここを離れるぞ。追っ手を殺ったから多少は時間が稼げるがそれもあまり持たないだろう。追っ手の奴らが戻ってこないことがわかったらやつらに俺が生きてることがばれてしまう」
座って話していたアロンは立ち上がると付いた砂を掃うかのように尻をたたく。
リヒトもノアを抱えたまま同じように立ち上がる。
「お、やっと旅が始まるのか。楽しみだな、ノア」
「うい!」
リヒトの腕の中のノアは瞳を輝かせて笑う。