5.襲撃者
リヒトとアロンの声につられてか寝ていたノアが目を覚ます。
ノアはいつの間にか仲良くなっている二人を見て不満げに声を上げた。
「むー!」
「うお、ノア、起きたのか。どうした、そんなに頬を膨らませて」
「むぅ!ぶふぅっ」
リヒトはそんなノアの頬をつついて膨らみをしぼませる。
「ぷっは、顔がやばいことになってるぞ、ノア」
「むぅ!」
「こら、リヒト。妹をいじめるな」
ノアで遊ぶリヒト諫めたアロンはノアの頭を撫でる。
ノアは気持ちよさそうに目を閉じる。
「あうー」
「ノアは俺とリヒトが仲良くやってる姿に嫉妬したんだな。ノアも一緒に仲良くしたかったんだ」
「あー、なるほどなあ。まったくお前は変なところでへそ曲げるよな。お前ももちろん仲良しに決まってんだろ」
そう言ってわしゃわしゃとノアの頭をかきまわす。
当然だ、とアロンもノアに笑みを向ける。
「う!」
それならいいとばかりにふんぞり返るノア。
そんなノアを微笑ましく眺めていたアロンはふと纏う空気を変え、周囲に視線を走らせる。
「ああ、お客さんか」
そんなアロンを見てもまるで初めからわかっていたように特に動揺も見せないリヒト。
リヒトの髪をいじくるのに忙しく周りの状況にまったく気づいていない様子のノア。
そんな三人を囲うように白い衣をまとい武装した集団が現れる。
「やっと見つけたぞ異端者め!」
「!?おい、こいつなんでこんなにぴんぴんしてるんだ?!」
「グルー様があとはとどめを刺すだけというところまで痛めつけていたはずだぞ?!」
「話が違うじゃないか!!」
「まずいな、ここはいったん引いたほうがいいかもしれない」
「何を言ってるんですか?!隊長!!いくら見た目が完治していようがグルー様があれだけ痛めつけていたんです、やるなら今が好機!それにこいつを連れて帰らなければグルー様に合わせる顔がない!!」
現れた白装束の集団はアロンの姿を見ると動揺したように口々に言う。
アロンが腰に差した剣に手をかける。
「問題ない。もとよりお前たちはもう二度とグルーと会うことないんだ」
「貴様、何を言っているん……だ…あぁ?」
アロンがそう言い終わらないうちにすべてが終わっていた。
「ぎゃああああああああああ!!」
「何でお前の顔が反対に見えるんだ……?……あ…れ……?」
「うあわああああああああ!!体が燃える……!!」
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!」
あるものは首が胴と離れ、あるものは炎に包まれる。
一瞬で死んだ者もいれば致命傷が与えられていても死ねないものもいた。
一瞬で死ねていたならまだ救いはあっただろうに多少腕に自信のあったものは生き残ってしまった。
まあ、それもすぐに途切れるであろうが。
「ほら、これで合わせる顔なんか必要なくなっただろ?」
たくさんの死体の中、一人立つアロンは軽薄な笑みを浮かべていた。