第1夜 夢の始まり
もう、何も見えない。
周りを見渡しても、視界は一面の闇。もういっそ、このまま諦めてしまえれば、どんなに楽だろう。このまま思考を絶って、全てのことから目を背けてしまえばいい。そうすれば、こんな事を繰り返す必要は無い。
でも、そこにいるなにか
が、私を引き戻す。
「諦めるのか?」
「お前は、それで良いのか?」
「こんなつまらない、呆気ない、何一つ成し得ない結末で、本当に良かったのか?」
良い訳がない。でも、この結末以外を知らない私にはどうにも出来ない。それに、もし諦めなかったとしても、その先に待っているのは絶望だ。そもそもなんの為に、こんな終わらない悪夢を見ているのか分からない。そろそろ目覚めてもいいはずだ。もう、眠りすぎた。
「はぁ、つまらない。そんな回答を望んでいたわけではないのだがな。お前にはこの悪夢に打ち勝って欲しい。そんな願いを込めたつもりだったのだが。」
出来ないことを望まれても困る。もしできるのならば、とっくにこんな悪夢終わっているはずだ。今もこうして悪夢を見続けていることが何よりの証拠だとどうして分からない。
「何を勘違いしている。悪夢は終わる。現にこれは悪夢などでは無い。私がお前に望んでいることは悪夢に打ち勝つ事だ。諦めて終わった悪夢など、既に見飽きている。私が知りたいのはただ一つお前が悪夢に打ち勝ったその先に、果たして何が有るのかだ。」
そこまで言うならヒントの一つも教えてほしいものだ。悪夢に打ち勝つ、などと言われても理解できる訳がない。
「ヒントなど、出す必要もないんだがな。悪夢に打ち勝つ方法は簡単だ。その夢から覚めてやればいい。本来、夢というものは覚めたら終わるものだからな。当然、その過程が重要だが。」
訳がわからない。覚めたら繰り返すというのに、起きろとでも言うつもりか。
「そうだ目覚めろ。それで悪夢は終わる。目覚めたければ、立て。諦めるな。それが、お前の使命だ。」
本当にくだらない。目覚める前に立ち上がるなんて、もはや皮肉のようなものだ。それでも、それだからこそ。
「いいわ。そこまで言うならやってあげる。もうどうなっても知らないから。あんたの望みには別に、興味ないけど。でも、ここで諦めたりしたらそれこそ負けた気がしてムカつくもの。あんたが悔しがるような結末に辿り着いてみせるんだから。」
「そうか。それは楽しみだ。いいだろう。私が悔しがるような結末に辿り着いてみせろ。」
「当然よ。悪夢に勝って、泣いて悔しがるあんたの前にもう一度現れてふんぞり返ってやるから。」
「どうやら、心の準備は充分なようだな。」
「ええ。」
「ならいってこい。そら、お迎えが来たぞ。」
その瞬間、電子音のようなノイズとともに、視界がホワイトアウトする。
No.4018、ニンショウカンリョウ。
コレヨリ、ムソウカイキヲカイシシマス。
そして、永い悪夢が始まる。