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おしゃべりカラスとガラクタの町  作者: しろながすしらす
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第6話 作戦会議?

 蓮と柊は秋葉原に来ていた。


「何でまたここで……」 


「だって私がここでレプシードになったんだから近くに犯人の手がかりがあるかもしれないじゃない?」


「まあそれもそうだけどさ」


 言っていることは正しいが、嬉しそうな顔をしながらも店内を物色している姿は全く説得力がなかった。

 こいつ本当はただ買い物したかっただけじゃないか?


「あっ! これ新刊出てたんだ」


 柊は棚に陳列されている一冊の本を手に取った。


「蓮くんは、何か買わないの?」


「いや、俺こういうのよくわからんし」


「えっ! 蓮くんってオタクじゃなかったの? 秋葉原にいたからつい同じ趣味なのかなって思ったのに」


 秋葉原にいるだけでオタク認定されるのは何か納得がいかない。


「あの時はただテレビの下見に来ただけだからな」


「なーんだ、せっかく同じ趣味の友達ができると思ったのに……」


 柊は少し残念そうにうつむいた。


「俺も普通に漫画読んだり、ゲームとかするけど……、何て言うの? こういうアニメチックな本とかは読んだ事ないし、アニメもほとんど見ないかな」


「ふーん、蓮くん他に趣味はないの?」


 うーん。

 蓮は少し考えた。

 休日の過ごし方といえばテレビを見るか、近場で適当に買い物したり、ミッキー(極道みたいな方)と遊ぶくらいだ。運動も嫌いじゃないが、部活に入って熱心に打ち込むほどの気力はない。

 蓮は色々と手を出しているが自分がこれといって熱中しているものがないことに気づいた。


「いや、色々やるけど飽きっぽいせいか、これといって趣味はないような気がする」


「素質ありだね」


「いや、何の素質だよ?」


「オタクの」


 柊が今のやり取りのどこに素質を感じたのかは不明だ。


「蓮は他の分野にも素質があるのですね。さすがなのです」


 シロに褒められたがちっとも嬉しくなかった。

 オタクと言えば世間的にあまり好印象ではないし、事実かどうかはともかくテレビの報道で変人として取り上げられることが多い気がする。

 蓮の中ではオタクとはどこかアウトローな存在だった。


「試しにラノベ一冊買ってみれば、蓮くん絶対ハマると思うよ」


「何、ラノベって?」


「ライトノベルだよ。簡単に言えば漫画みたいにすらすら読める小説みたいなものだよ」


「小説かぁ、俺あんま小説好きじゃないんだよね。文字多いし読み終わるのに時間がかかるし」


 それに、ラノベと呼ばれるほとんどの表紙がレジに持っていくのに勇気を試される代物ばかりだった。

 これは何かの試練だろうか?


「初めて読むんだったら絶対これがおすすめ、すごく読みやすいし、王道だし、それに毎回いいところで終わって凄く続きがきになるの」


 柊が一冊のラノベを手に取り蓮に手渡した。

 表紙にはあられもない姿をした少女たちが写っていた。

 タイトルは「乳が如く ー失われて桃源郷ー」


「絶対面白いから、騙されたと思って読んでみて!」


 蓮は特に興味もなかったが、キラキラと期待の眼差しを向ける柊に負け購入することにした。


「おおう、そうだな……、試しに読んで見るのも悪くないかな」


 手に持っているブツを隠すように挙動不審にレジに並ぶ蓮。

 麻薬の取引をしている人間はきっとこんな気持ちなのだろうか?

 

 前にいる客の会計が終わり、いよいよレジに近づく。

 レジの店員を見て蓮は愕然とした。

 店員は蓮と同じ年代くらいの若い子だった。それによく見るとなかなか可愛い顔つきをしている。

 可愛い店員に当たるのは嬉しいが、この場に置いてはありがた迷惑な話だった。

 店員がおじさんの方がまだ気楽だった。


「蓮の持っている本、巨乳の女の子ばかりなのです。蓮はおっぱいが好きなのですか?」


「お前、直前で俺の決意を揺らぐようなことを言うんじゃない」


 蓮は小声でシロに悪態をついた。

 しかし蓮も一人の男、ここに来て引き下がったら男の名が廃る。

 蓮は覚悟を決めた。

 これは試練だ。過去に打ち勝てという試練と蓮は受けとった。


 柊の買い物に付き合いしばらくした後、蓮と柊はファーストフード店にいた。


「あー、お腹すいた。そう言えば昼から何も食べてないんだったね」


 柊は小さな口でハンバーガーにかぶりついた。


「そういや、レプシードのことについて何かわかったことはあったか?」


 蓮はポテトをつまみがら言った。


「うーん、正直よくわからない」


「まあ、それもそうか。手がかりも全くないし。現実はテレビドラマのように簡単に犯人は見つかったりしないよな」


「でも、犯人は案外は短にいるのかもしれないね」


「どういうことだ? 何でそんなことがわかる?」


「この前ニュースになったハッピー&スマイルと星林高校の火災事件はたぶんレプシードが関係していると思うの。不審な点がすごく多いし、被害の規模からしてもそうとしか思えない」


「ああ、それは俺も思った」


 ハッピーアンドスマイルは確かミッキーが言っていた大手企業の飲食店でつい最近の事件だ。星林高校の事件は確か2ヶ月ほど前だったはず。


「その事件って、二つともそんなに離れた距離じゃないし、少なくとも私は関東地区に犯人がいるんじゃないかなと思ってる」


「確かにな。現時点でレプシードが関与していると思われる事件はその二つか。柊が被害受けたのもそう離れてない距離にあるし、関東内にいるってのはありえるかもな」


「ここには犯人の痕跡はなかったけど、明日は星林高校かハッピ&スマイルの近くに行ってみる? 何かわかるかもしれない」


「そうだな、それにしても犯人はどうやって人をレプシードに変えたんだろうな」


「きっと、犯人はこの世界の人間じゃないのです。私と同じような力を持った何かなのです」


 ナゲットを突っついていたシロが蓮の方を見て言った。


「お前みたいなやつが他にもいるってことか? そもそもお前は何者なんだ? この世界の生き物じゃないことは何となくわかるけど」


「少しだけ思い出したんですけど私は……、この世界を見守っていた神様のような存在だった気がするのです。何か思い出しそうな気がするのですけど、思い出そうとすると何故かすごく怖い気持ちになるのです。ただ、この世界を脅かそうとしている存在を絶対に放って置けないのです」


「今回のレプシード化の犯人はお前と同族ってことなのか?」


「たぶん、私はレプシード化の犯人を知っていたような気がするのです」


「本当か? どんな姿だ?」


「思い出せないのです……、役に立てなくてごめんなさいなのです」


 カラスは悲しそうな声をしながら空になった皿を見つめていた。


「大丈夫! つらいなら無理して思い出そうとしなくていいから、犯人は絶対見つけるから心配しないで」


 柊は気落ちしているシロの頭を優しく撫でた。


「まあ、俺にできる範囲なら手伝うよ。これ以上犠牲者を増やすわけにもいかないしな。そんな辛気臭い顔してないでとりあえず、そのクチバシについたケチャップふけって」


「ありがとうなのです。私は蓮と玲奈に会えて本当に良かったのです」


 腹ごしらえをして、ふと外の景色を見ると日が少し落ちていた。

 明日も学校なので、蓮と柊はひとまず解散することにした。

 柊と一緒に帰りの電車に揺られ、乗り換えのため一緒に駅に降りた時のことだった。


 突然周囲の空間が黒く霞がかっていく。

 間違いない、閉鎖空間だ!

 てことはこの近くにレプシードが出現したってことか?

 まずい、急いでレプシードを浄化しなきゃ大変なことになる。


「蓮!」


「ああ、わかってる」


 危機を察知したシロは光り輝くと銃へと変化した。

 蓮はすぐさま銃を自分のコメカミに銃口を当て引き金を引く。


「あいかわらず、ダッセェなこの姿」


「よく似合っているのです」


「嬉しくねぇ」


 蓮はふと柊を見ると蓮と同じく姿が変わっていることに気づいた。

 黒いローブにとんがり帽子に古びた杖。

 RPGに出てくる黒魔道士のような格好をしていた。


「何これ? どうなってるの?」


 柊は不思議そうに自分の体を見た。


「玲奈には私の力を分け与えているのです。これでレプシードと対等に戦えるのです」


「何で魔法使いの姿なの?」


「閉鎖空間は厳密に言うと精神世界なので、人によって姿が変わるのは当然なのです。心の奥底にある憧れや理想の姿になることが多いのです」


「そうなんだ。私ファンタジー物の話大好きだから、きっとこの姿なんだね」


 柊は蓮の方に視線を移すと「あっ」と小さく声を漏らしそっと視線を外した。


「違う、違うぞ柊! お前は誤解している」


「早くレプシードをどうにかしなきゃ」


 柊は思い出したように走り出す。


「おい待て、違う俺にこんな趣味はない! おいシロお前適当なこと言うなよ」


「心は何よりも正直なのです」


「違う。俺は本当にこんな姿に憧れた覚えはない。なあ頼む一生のお願いだ。この姿を変えてくれ!」


「それは私にはできないのです。蓮の心に相談してみるしかないのです」


 心に相談してみるも姿が変わることはなかった。

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