表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おしゃべりカラスとガラクタの町  作者: しろながすしらす
28/39

第28話 文化祭前半 ー天国と地獄ー

 文化祭当日、クラスはいまだかつてないほど賑わっていた。

 教室の入り口にはデカデカとコスプレ喫茶と書かれた看板が吊り下げられている。

 教室内はお客さん用のテーブルとイスがズラリと並んでおり、あちこちに風船や旗みたいな飾り付けがされている。


 開店30分前。


「よし行くか」


「おう。なんか少し緊張するな」


「うん、そろそろ時間だね」


 蓮たち3人は戦に向けて更衣室に向かった。蓮たちは更衣室につくと相川に渡された白い袋をそれぞれが開封する。


「おお! クオリティたけーなおい」


 蓮はあまりの完成度の高さに驚く。それは普通にリアル神威と見分けがつかないほどの出来だった。


「美しい……」


 ミッキーが惚れぼれした様子で手に持った魔法少女の衣装を握りしめている。

 その姿はどこか犯罪の匂いがした。


「あ、あれ? おかしいな」


 蓮が着替えていると、零の困惑したような声が聞こえた。


「どうした零?」


「あ、いや僕の衣装どうやら間違って柊さんか相川さんのが入ってたみたい」


 零の両手にはメイド服と猫耳が握られていた。


「ああ、それたぶん間違いじゃないぞ」


 何故なら、蓮は柊と相川の衣装を事前に知ってるからだ。


「あはは……、冗談だよね!?」


 零は微笑んだ後、急に真顔になった。


「いや、マジマジ」


「僕一人女の子の格好するのはやだよ! そうだ蓮くん僕の衣装と交換しない?」


「するかアホ! 俺がメイド服着たら狂気でしかないだろ。それに安心しろ、お前の仲間ならここにいる」


 そう言って蓮は自分の追い求めた完成形に至ったミッキーの肩を叩いた。

 ミッキーは零を見ると、ニカッと笑い親指を立てた。

 魔法少女の姿で。


「……うん」


 零は諦めたようにメイド服に着替えた。

 着替え終わると蓮たちは教室に向かった。

 教室に向かうと、すでに着替え終わった柊と相川がいた。

 柊は黒いローブに身を包み、とんがり帽子を被っている。柊の可愛らしい顔立ちによく似合っている。

 相川は口元をマスクのようなもので覆い、首にはマフラーを巻いている。所々露出した動きやすような姿はまさにくノ一。

 何かエロかっこいい。


「似合ってるじゃない。あなた達、特に零くん可愛すぎてちょっとムカつくわ」


 零のメイド姿を見た相川が悔しそうに言った。

 柊と相川も十分可愛い部類に入るが零は群を抜いていた。元々の女らしい顔つきと華奢な体に加え穏やかな雰囲気を持つ零とメイド服の相性は抜群だった。

 

「確かにな、このクラスで一番可愛いんじゃないか?」


 蓮がそう言うと露骨に柊と相川がムッとした顔をした。

 マジな目つきがちょっと怖い。


「からかうのやめてよ」


 不満げにそう言う零の表情もこれはこれで良いなと蓮は思った。


 開店時間になると蓮とミッキーは教室の端のスペースで商品の受け渡しをしていた。

 チョコバナナ、パンケーキ、綿菓子などを次々とお客さんたちに渡す。

 ちなみに教室の外では零、柊、相川が客引きをしている。


 外から声が聞こえる。「見ろよあの忍者めっちゃエロくね?」「ねぇ見てみて、あっちの魔法使いの外人さんお人形さんみたいで超可愛くない? 写真お願いしても大丈夫かな?」「女神だ。女神がいるぞ! あのメイドの子だけ他と次元が違くないか? やべー俺めっちゃ好みなんだけど」「あのメイドその辺のアイドルよりはるかにレベル高いぞ!」どうやら、柊たちの衣装は高評価のようだ。


 しかし、甘い誘惑に誘われ、期待に満ち溢れたお客さんもいざ教室内に入ると、突然地獄行きを宣告された表情になった。「えっ! ちょっと待て何だよあのダッサイ格好したやつと隣にいるクリーチャーは!?」「なるほど天国と地獄両方味わえると言うわけか……」「くそっ! ハメられた!」柊たちとは偉い差だ。


 おい、お前ら小さな声で喋ってるつもりだろうけど普通に聞こえてるから! 

 声のボリューム抑えろ! 

 心が折れたらどうするんだよ。

 蓮の心が折れかけた時、聞き覚えのある元気な声が聞こえた。


「お兄ちゃん、すごい格好してるね」


「うおお! あかり何でお前ここに!?」


 ミッキーは突然の来客に驚き立ち上がった。

 後ろにいる客はミッキーのあまりの迫力に何人か腰を抜かしていた。


「えへへ、実は今日退院だったんだ。お兄ちゃんを驚かそうと思って秘密にしてたの」


「お前……、よく来た! 本当に元気になりたがって」


 ミッキーの目は少し潤んでいた。


「俺たち午前中で終わりだし、午後は自由だ。たまには二人で思いっきり楽しんでこいよ!」


 蓮たちとはいつでも会えるしたまには兄妹水入らずの時間もいいだろう。


「おうよ! っしゃあ! 何だかやる気が湧いて来たぜ! あかりちょっと待ってろよ! チャチャっと仕事終わらせて午後はお兄ちゃんと思いっきり遊ぼう!」


「うん!」


 ミッキーの妹が満面の笑みを見せる。

 今度の笑顔は蓮から見てもわかる紛れもない本物だった。


 午前中はあっという間に過ぎ、自由時間となった。

 ミッキーは妹と二人で文化祭を満喫するようだ。


「この後どうする?」


 一仕事終えた零が背伸びしながら言った。


「とりあえず、制服に着替えてくるわ。さすがにこの格好で周りたくないし」


「じゃあ僕も……」


 蓮と零が更衣室に向かおうとした時だった。


「ちょっと待って。二人とも正気!? 文化祭はまだ終わってないのよ。制服に戻るなんて私が許さないわ」


 相川が不服そうな顔で言った。よほどこの衣装がお気に入りらしい。


「いやそんなこと言われても困る。俺これ以上晒し者にされたら不登校になっちゃう」


「僕も」


 零が間髪入れず同意する。


「わかったわ。なら仕方ない。かわりに今日撮った二人の写真をネットにあげることにするわ」


「仕方なくねぇよ! 何公開処刑しようとしてんだお前! てかいつまに盗撮したんだお前!?」


 零はともかく、蓮の写真がネットで拡散されるのはマズイ!


「どうする着替えるの、着替えないの?」


「それ実質一択だろ!」


 蓮と零は諦めてこの姿のまま過ごすことにした。

 いや、待てよ……


「悪い、ちょっと俺トイレ言ってくるからお前らは先に適当に回っててくれ」


 一通り用事を済ませた後、蓮はすっかりみんなとはぐれてしまった。

 みんなと合流しようと居場所を聞くと柊から返信があった。「みんな体育館にいる。早くしないと私たちの番終わっちゃうから急いで来て!」


「何を急いでるんだあいつら?」


 蓮はよくわからないがとりあえず体育館に向かうことにした。

 体育館に着いた瞬間その意味がわかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ