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おしゃべりカラスとガラクタの町  作者: しろながすしらす
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第2話 奇妙な事件


 教室に入り、窓側の一番後ろの席に腰を下ろすと目の前に座っていたミッキーが振り向いた。

 ちなみに誰もが知るあの有名なネズミのキャラクターではない。


「おう、蓮どうした? なんか朝っぱらから不景気な顔して」


 三木勝みきまさる、通称ミッキー。蓮とは旧知の仲だ。

 可愛らしいあだ名だが、見た目は誰がどう見ても極道にしか見えない。

 凶悪な人相に加えて身長は180センチ以上あり、筋肉質な体をしているためか威圧感が半端ない。

 本当はいいやつなのだが、見てくれが原因で誰も近寄ろうとはしなかった。


「お前これどう思う?」


 蓮は肩に乗っている白いカラスを指差して言った。


「これとか言っちゃダメなのです」


 カラスが不満げな声を漏らす。


「これ? 何の話だ?」


 ミッキーが不思議そうに首を傾げた。


「悪い、何でもない。気にしないでくれ」


「どうしたお前? 今日なんか変だぞ」


「一つだけ聞いていいか?」


「何だ?」


「喋るカラスっていると思うか?」


「マジでどうしたお前? カラスが喋るわけないだろ」


「だよな」


「カラスじゃないのですー!」


 蓮はすぐ頭の横にいるカラスの声を無視して次の授業の準備を始めた。

 蓮は授業中上の空だった。

 黒板の文字はただ右手が自動で書き写しているだけ、教師の言葉はそのまま耳を通り抜けるだけで全く内容が入ってこない。

 

 原因はさっきからずっと頭の横で「暇なのですー」「こんなことしている場合じゃないのです」「お腹が空いたのです」と喋り続けるカラスだ。


 このカラスは何者なのだろうか?

 なぜ自分に付きまとってくるのだろうか?

 世界を救う? 

 良くないことが起こる?

 世界中の人間が死ぬ?


 何を言っているのか全くわからない。

 考えても考えても答えが出なそうなので、蓮は諦めて寝ることにした。


「起きるのです! 居眠りはよくないのです」


 カラスのクチバシが頭頂部を小突く感触に襲われたが無視した。

 はっきりと見える白いカラス、鼓膜を通して伝わる声、肩に乗る感触、頭部を刺激する痛み。

 どれもが紛れもない本物だった。

 蓮はいつの間にか目の前にいる奇妙な存在を現実だと受け入れつつあった。


 午前の授業が終わり、昼休みになると蓮はミッキーと一緒に購買に行き、売れ残りのパンを買うと屋上に向かった。

 人混みと賑やかな場所があまり好きではない蓮はいつもの場所で食事をとる。


「平和な世の中だよな」


 蓮がパンをかじりながら呟いた。


「まあ、日本は世界的に見ても治安はいい方だろうな」


「お腹空いたのですー。私も食べたいのですー」


 蓮は羽をバタバタと忙しなく動かすカラスから目をそらし空を見た。


「なぁミッキー、この平和な世の中に人類が滅亡するような大事件とか起こったりすると思うか?」


「どうした急に?」


「いや、別に。世界を揺るがすような奇妙な事件とかあったりするのかなって思っただけだ」


「ふーん。奇妙な事件と言えば、今日の朝のニュースとか異常だと思うぜ」


「今日のニュース?」


 ふと足元に視線を下ろすと、こぼれ落ちたパンくずをカラスが必死に食べていた。


「見てないのか?」


「朝、ギリギリに起きたからな」


「ああ、ほらあの名前は何だったかな? まあ細かいことは忘れたが大手企業飲食店の社内で殺人事件があったんだよ」


「殺人事件なんて毎日のようにニュースでやってるだろ」


「ああ、でもあれはどう考えても普通じゃない」


「ふーん」


「一夜のうちに30人以上の人間が殺されて、犯人が見つからないってそんなことあると思うか?」


「30人!?」


 蓮はお茶をむせこみそうになった。


「ああ、しかも犯人の手かがりは一切なくて、社内はまるで人間がやったとは思えないほどめちゃくちゃに荒らされたらしいぜ。そんだけドンパチ騒いでたら普通誰もが異常に気づくだろ? なのに目撃情報が一切なくて、朝出社した社員が気づいたらしいぜ」


「レプシードの仕業に間違いないのです」

 

「レプシード?」

 

 カラスの呟きに蓮は思わず反応してしまった。


「レプシード? 何だそりゃ?」


 蓮の突然の謎の発言にミッキーもつられて反応した。


「あ、悪い、何でもない。こっちの話だ。てかそろそろ休み時間終わりじゃねぇか」


 蓮は慌てて話をそらす。


「お、言われてみればそうだな」


 蓮は教室に戻る間、蓮の頭の中にカラスが言っていた言葉が頭から離れなかった。

 レプシードとは一体何なのだろうか?

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