5月とそのちょい前
あらすじなんてなかった。良いね?
時刻は間もなく午後13時になろうとしていた。
若干人が少なくなってくるこの時間帯で昼をとることが日課となっていた。
「今日も一人でぼっち飯かなー奥田くん」
いつも通りの端の席に座ったまま俺は彼女に話しかけられる。
悲しいことに女友達なんぞここ数年全くと言っていいほどいない俺に遠慮なく声をかけてくる女は一人しか心当たりがない。
「なんですか林さん」
またこいつかと心のなかで毒づいておく。
何を言いたいのかはもう知っている。
グイと顔を近づけてきて目を輝かせながら彼女は言った。
「そろそろ魔法使いになってみない?」
悲しいからってなんでこんなアホに絡まれんとならんのだ。
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「じゃ、お先に失礼しまーす」
「おー、う、おつかれー」
なにやらろれつの回らない店長の声が聞こえてくる。
「明日も朝から忙しくなるのに二日酔いだけはやめてくださいよ」
一応言っておく。まあ無駄だろうが。
あんな店長でなんでこの店潰れないんだろうね売ってる物も意味不明だし。
そこそこ貰えるバイト代につられて怪しい仕事するなんて傍から見れば俺はただの馬鹿だ。
店の裏手に置いてある自転車に向かう。
と。
何か喚き声が聞こえる。
女の声?今何時だと思ってんだ、良い子は帰って寝る時間だぞ。
そう思いつつ怖いもの見たさにそっと覗いてみる。
男女が二人でなにやらお取り込み中のようだった。
――おいおい、何こんなところでそんなことしてんだ、酔っ払ってんのか?探せば近くにホテルとかあるだろ。
二人が愛し合ってる中に自分の自転車を取りに割って入る勇気なんぞない。
しばらく時間置いて出直すか、、。ん?今日は確か、、、やべえ!そういや今日「月刊自転車野郎」の発売日じゃん。本屋に行こう!素早い行動は良い結果を生む。
と、月に一度の楽しみのためにその場を離れようとしたときだった。
ガシャガシャコン!
派手な音が聞こえた瞬間俺は走り出した。
***
「ちょっと!離してよ!」
痛い――押し倒された時についた手首がズキズキと痛む。
「ねえ、いい加減僕と付き合おうよ!林さん!」
「何言ってるのあなた――」
ホントに何言ってるのこの人!!私このデブのことなんてほとんどしらないわよ!
えっと誰だったかしら、、、名前も思いだせないんですけど、、
「何言ってるって、、君の方からだろう僕を誘惑してきてたのは?」
「そ、そんなこと――」
女が必死に逃げようとするが男の太ましい腕が、男の欲望に満ちた声が女を押しつぶす。
「林さん、ハヤシサンんん!!」
男は止まらない。
なんとか必死に逃げようと走ろうとするも足に何か引っかかり勢い良くコケる。
――こんな時に何?
涙を抑え見るとそこには新品同様の自転車が横たわっていた。
邪魔!
怒りに任せ自転車を相手に投げる。思いの外軽く一瞬気がそれる。
男は興奮のためかぶつけられてもびくともしない。
それどころか自転車を受け止め己の力を誇示するようにソレを地面に叩きつけた。
バキという音とともに車体が歪み。
男の手が自分の手を掴む。
「ちょ、ちょ、触らないでよ!」
――もう使うしかないの、、?
男の手が己の胸にに触れる。男の顔がニヤと歪む。
――コイツをコロス
固い決意とともにそれを実行に移そうとした。
刹那。
頬に何かが飛んできた。この匂いは、、
「血?」
凄まじい勢いで男が吹っ飛んだ。
――え?
いきなりのことに頭がついていかない。
まだ自分は何もしてなかったはずなのに――。
ふと我に返り男が飛ばされた反対を見る。
振り返って見るとそこには不思議そうに自分の手を見る少年が居た。
いや手を見るというのはおかしいかもしれない。
そいつの手首から上には何もなかった。
連載って飽きたら終わりなん?