出会い
冒険は、いくつになっても楽しいものだ。普段しないことをするだけで冒険と呼べるものになる。二つに別れた道だって、あなたのチョイス一つでストーリーが決まってしまう。
そんな不安定さが・・・なんとも言えない極上のスリルではないだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇
ものすごく私的な理由の・・・ある事件がきっかけで、本を読める場所を求め歩き回った結果。
怪資料館という最高の穴場を見つけた。雲鎧カナメ(12)
そして今、資料館の少し埃っぽいドアを押した。
古いけれど、ツタに飾られた門や庭にある立派な彫刻を見れば外装はなかなか立派だといえる。カナメは一番端にあるお気に入りの椅子に座って、自分で持ってきた辞書に見間違うほどの分厚い本の続きを読み終わると、今度は資料館の本棚から表紙が真っ赤な本を選んで、再び椅子に腰かけた。
◇◆◇◆◇◆◇
どのくらいの時間が経っていたのだろう。俺は、ふと背後に気配を感じた。
「おはようございます。」
「・・・!!」
今夕方・・・その場にそぐはない挨拶も気になるところではあった。
突然の事に大声さえ上げはしなかったが大袈裟にビックリし、振り向くと自分より少し幼いとみられる女の子が立っていた。
(昨日はいなかったよな?)
「この図書館を管理しています。栞と申します。」
いきなり姿を現した少女は、
色白で、ニッコリ笑うと笑窪ができるのが印象的だ。
茶色がかった長い髪はゆるく横に一つ三つ編みで結ってある。
(というか、こんなに立派な資料館が無人なはずないよな。油断した。)
「ゆっくりしていってくださいね。」
栞という名の少女はぺこりと頭を下げると、そのまま階段をゆっくりと上がって行ってしまった。
「・・・どうも。」
俺は、何とも言えない少女の雰囲気にすこし圧倒されていた。
◇◆◇◆◇◆◇
「ふぅ・・・。」
少しくすみがかった窓ガラスの奥からの光が弱くなっていくのがわかる。
「あっ、そうだ。」
先ほどの少女を探すためキョロヨロと周りを見渡した。
「どうかなされましたか?」
本を持っている両腕の隙間を潜り抜けて少女が姿を現した。
さすがにビックリし、鈍い音とともに椅子から腰を落したのだが。驚かした張本人は何事もなかったようにこちらを見てニコニコ笑っているだけ。
カナメは打った所をさすりながら・・・はっと、要件を思い出す。
「ほ、本の貸し出しってできるんですか?」
さっきの出来事のせいかまだ鼓動が速い。
「申し訳ありません。この資料館では、貸し出しはしておりません。」
栞は投げかけられた質問に、ニコニコ淡々と答える。
「残念・・・じゃあ、また来ます。」
「お待ちしております。」
門限の時間が迫っていることに気が付き、急いで本をもとの場所に戻し。入り口に向かった。
それから栞がわざわざ出入り口まで出て、軽くお辞儀し見送ってくれる。
カナメも軽くお辞儀をし親を心配させまいと、その子を背に小走りで帰っていくのだった。
「あの方なら・・・。」
そんな小言も耳に入らないまま・・・
目を通してくださりありがとうございます。
自分の言葉が届きますよう。