秘密基地
秘密とは、魅力的な響きである。アレほど不安定なものはないと自分は思うのだ。
守り抜くスリルもあり。他人との共有・共感もできる。
ただ・・・誰しもが持っていて絶えることがないのが、ちと面倒である。
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物語が始まる前に少年を簡単に紹介しておこう、名は(雲鎧カナメ)・性(男)・歳(12)・職業(小学生)・好きなコト(読書)・柔らかな印象を受ける栗色の髪で、眼鏡がよく似合う少年。
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眼鏡をかけた少年は一人教室で読書をしていた。しばらくすると友人達も帰ってしまっていたことに気付く。一応遅くまで学校に滞在しないように気を付けている彼だったが、それは彼にとって日常茶飯事のことであった。
静かに本を閉じた少年は、少し短い溜息をついて紺色のランドセルとともに長いこと腰を下ろしていた席を立つことにした。
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歩きながら説明しようか・・・一週間ほど前かな。
家でおとなしく本を読むことしか楽しみがない少年が家に帰ってこないという事件が起きた。
少年といっても小学生だ。さすがに心配した親が学校や警察にまで連絡を入れ必至こいて探し回っていたという。ところが当の本人は本を読むのに夢中になり過ぎ、学校の閉校時間になっても気がつかず夜中まで教室の端で読書をしていたというのが真相だった。
その後教室の見回りに来た先生に無事見つけられ、親にこっ酷く叱られる。また、いろんな人に頭を下げて回ったのは言うまでもないだろう。
という風にとんでもなく滑稽な失態をしでかした俺は、家に帰って親の前で本にかぶりつくことが何となくタブーになっている。しばらくの間とはいえ、続きの気になる本が目の前にあるのに読めないなんて、目の前に焼き立てのステーキが置いてあるのに待てを食らっている犬ではないか!!悲しいことに今その気持ちがよくわかる。
そこで学校や家の代わり・・・そう、本を読める場所を求め歩き回った。
結果、怪資料館のたどりついたのだ。
(本はあるし、人の気配すらなく静かだし。なにより、外観の不気味さが雰囲気をかもし出しててたまんないよなぁ。)
※この主人公は若干変人です。
【怪資料館】
物心ついた時からあって、その不気味な外観から近所の人でさえも避けてめったに近寄らない。最近学校でちょっとした噂になっているが、まだ入ったことがある奴はいないらし、まさに好都合な穴場である。
放課後友達と遊ぶのをそっちのけで本を読みに行くのが俺の日課になっていた。
さっそく中に入ろうとツタに飾られた門をくぐり、つぎに烏の彫刻の前を通る。
そして、少し埃っぽい木製のドアを押す。古いけれど、外装は教会みたいでなかなか立派だ。
内装も負けちゃいない。まるで、社長が座っていそうな偉そうな椅子に。資料館の敷地の大きさに似合うようないくつもの大きな長机。な!秘密基地みたいでワクワクするだろ。
そして俺は、一番端にあるお気に入りの椅子に座り。学校で読んでいた本続きを読み始めるのだった。
背後の小さな影にも気が付かづに・・・
目を通してくださりありがとうございます。
自分の言葉が届きますよう。