ナルシスト勇者「セカイはボクを中心に回ってる☆」
やあ、画面の前のみんな。グーテンモーゲン。
ボクの名前は成島須藤。
ごく普通のイケメン高校生さっ(キラッ)
……え?ボクがどれくらいイケメンなのか聞きたい?
残念ながら、ボクのイケメンっぷりは、地球言語で表せるレベルを遥かに凌駕してしまっているんだ。
挿し絵でボクのイケメン顔をお見せ出来ないのが残念でしょうがないよ。
だから、不服ではあるけど、かなり謙虚な表現を使わせてもらうおうかな?
ボクは宇宙一のイケメンだよ。
町中で鏡に写った自分の姿を一日中見惚れていたら、警察がボクを不審者と間違えて、職質を受けた事があるってくらいにイケメンだよ。
イケメン過ぎることは、罪ってことなんだろうね。
フッ、ボクは罪作りな男だよ。
ところで話は変わるけど、ボクは異世界に召喚されちゃったんだ。
王様らしき人が、目の前で土下座してるから間違いないね。
王様ですら、ボクのイケメンには屈服するって事なんだろうね。
「おお、勇者様。どうか魔王を倒してください!」
「いいよ、ボクのイケメンにかかれば魔王なんてゴミ同然さ」
こうしてボクは、女戦士、女魔法使い、女僧侶と共に四人旅に出ることになったよ。
ハーレムってやつだね、まあボクのイケメンなら当然の結果だよね。
☆
「では、勇者様。あなた様の力をお見せして頂きたい」
城を出発早々、女戦士がそんなことを言って、剣を抜いたよ。
決闘をして、ボクの戦闘能力を見たいようだね。
「いいとも、レディの頼みは断れないね」
こうして、ボクは女戦士にボコボコにされたよ。
全身擦り傷や泥まみれだよ。
やれやれ、イケメン顔が台無しだよ。
「……すごく弱い。スライム以下だ」
まったく、ボクみたいなイケメンに戦闘力を求めるなんてナンセンスだよね。
だからボクはこう言ってあげたよ。
「自慢じゃないが、ボクの体育の成績は万年1だよ」
イケメンナンバーワンなボクを示すのに相応しい数字だよね。
「なんだこいつ……」
女戦士が侮蔑の混じった視線でボクを見てくるよ。
ツンデレってヤツだろうね。
やれやれ、モテモテ過ぎて困っちゃうね。
「待って女戦士。もしかしたら、魔法に秀でているタイプかもしれないわ」
今度は女魔法使いが、なにやら水晶らしきものを取り出したよ。
どうやら、魔力を測定する装置らしいね。
「魔力数値……0ですって? ありえない……」
女魔法使いは、驚きを隠せない様子だね。
魔力数値0というのが、どれだけ凄い数値なのかは知らないけど、彼女の反応を見る限り、相当凄いんじゃないかな?
「クソみたいな数値だわ。生きてる意味ないんじゃないの?」
女魔法使いがハッキリと蔑んだ目でボクを見るよ。彼女もツンデレなんだろうね。
やれやれ、イケメンはそこにあるだけで素晴らしい存在なんだからさ、魔法なんて必要ないよね。魔法を使うイケメンなんて野暮ってもんだよ。
「あ、もしかして特殊なスキルを持ってるとかじゃないですか?」
女僧侶がボクにそんな事を言ってきたから、ボクは自信満々でこう答えたよ。
「ボクみたいなイケメンに、魔法やスキルなんて必要ないよ。あるのはイケメンという1つの事実だけさ」
女僧侶は、黙ってボクの顔にツバを吐いたよ。
やれやれ、ボクの仲間たちはツンデレばっかりだね。
※
「ねえ、クズ……じゃない、勇者様。貴方はなぜ、そんなにクズなんですか?」
ある日唐突に、女戦士がボクにそんなことを訊いてきたよ。
当然ボクはこう答えたよ。
「え?なぜボクがこんなにイケメンかって?毎朝飲むロイヤルミルクティーのお陰かな?あの高貴な香りは、同じく高貴なボクにこそ相応しいよね」
「んなこと訊いてねえよゴミクズ」
※
「ねえ、ゴミクズ……じゃない、勇者様。お願いですから死んでくれませんか?」
ある日唐突に、女魔法使いがそんなことを言ってきたよ。
当然ボクはこう答えたよ。
「え?死ぬほどボクの事を愛している?HAHAHA、熱烈なプロポーズだね。君のような可愛い子猫ちゃんにそんな事を言われたら、どんな男だろうとイエスと答えるだろうね。でも申し訳ない。ボクのようなイケメンは、誰のものにもならないんだ。イケメンは、全人類に対して等しく平等に輝き続けるものだからね」
「死ね」
※
「ねえ、死んでください勇者様……じゃない、勇者様。あなたはどうしてウザいくらいにポジティブなんですか?」
ある日唐突に、女僧侶がそんなことを言ってきたよ。
当然ボクはこう答えたよ。
「イケメンだから」
「は? 何言ってんの?」
※
そんなこんなで、ボク達は魔王城に辿り着いたよ。
結局、道中現れた魔物なんかは仲間たちが倒してくれたんだ。
本当、イケメンって得だよね。
「さあ、ボクたちなら魔王なんて簡単に倒せるさ。頑張って世界に平和を取り戻そう」
「何故でしょう、まともな事を言ってるはずなのに、勇者様に殺意が湧きます」
「むしろ魔王に殺されればいい」
「同感です」
やれやれ、ツンデレな女の子たちだ。デレ期はいつになったら到来するのかな?
※
そんな事を考えている間に、玉座の間へ到達したよ。
例によって、途中で現れた魔物や四天王なんかは、仲間たちが倒してくれたんだ。
「フハハハハハ!よくぞ来たな勇者たちよ!だが貴様らの命もここまでだ!」
そう言うと魔王は、なにやら呪文を唱え始めたよ。
すると、驚くべきことが起きたんだ。
「「「キャアァァァァァ!」」」
ボクの仲間が三人共、苦しそうにもがきはじめたよ。いったい、何が起きてるんだ……。
「フハハハハハ!これが我の持つ、唯一にして最強の魔法!『トラウ・マ・ヨミガエール』!この魔法を受けたものは、今までの辛い記憶や悲しい記憶を呼び起こされ、死ぬほど苦しい思いをすることになるのだ!ちなみに我はこの魔法しか使えず、戦闘能力は皆無で、ちょっとでも攻撃を受ければ簡単に死ぬほどの虚弱体質だが、貴様らがこの魔法を受けている限り、我が負けることなどあり得ない!」
「なんて卑怯な魔法なんだ。許せない!」
ボクは魔王に向かって剣を降り下ろしたよ。
魔王を倒したよ。
「グ、グアアアアアア!?なぜだぁ!なぜ我の魔法を受けてなんとも無いのだぁ!?」
魔王が断末魔の叫びを上げながら、ボクにそんな事を聞いてきたよ。
当然ボクはこう答えたよ。
「イケメンたるボクに、トラウマなんて有るわけがないだろう?」
「バ、バカなぁ……グフッ!」
こうして、異世界はイケメンなボクの手によって救われたんだよ。
めでたしめでたしってやつだね。