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⑤
彼はその日夢を見た。
真っ暗な場所で彼はひたすら歩き続けている。
それが、自分の意思で歩いているわけではないことはっきりとわかった。
それはまさに漆黒の道であったが、恐怖などという負の感情はなかった。
徐々に目が慣れてくると、目の前に大きな黒馬がいることが分かった。
はっきりと目視できる距離にいるはずのその馬と彼は一向に距離を縮めることができなかった。
気がつくと自分の母親が目の前に立っていた。
容姿は完璧に自分の母親であったが、その異質な雰囲気から自分の母親ではないことがはっきりとわかった。その自分の母親に似た物体はこちらに向かって何かを叫んでいる。
それを聞こうとしたが一向に聞き取ることができない。
さらに聞こうとすると胸に激痛が走るのを感じた。
彼はそこで目が覚めた。