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③
雨の日は好きであった。
なぜなら彼以外のほとんどの人にとって、それは幸運なことではないことを彼は知っていたからである。
なぜ彼自身雨の日が好きなのかは、彼自身にも分からなかった。
毎日の通勤電車の中にあっても彼にはさほどストレスにはならなかった。
いつもと変わらない日常において窮屈なことはそれを感じることを遮断することで無理なく彼にとって平凡という暗示をかけることに成功していた。
自分さした傘の淵から雨水が肩へと落ちる。
雨のしずく一滴、一滴が彼の肩に垂れることを望むわけでも、望まないわけでもない、そんな生活の繰り返しは彼の暗示をより強くしていった。