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②
彼は平凡という言葉がぴったりという感じのサラリーマンで
20年前に結婚した嫁との夫婦の溝は人を全く寄せ付けないような冬山のクレ
バスのようであったし、人生においてたいがいの現象について彼の中で解決することについて苦にならないだけの情報を彼は持ち合わせていた。
といっても普通に生活していれば、手に入るような情報に限ってはいたが。
彼が子供の時に両親と行った旅行に行ったときに見たようなトンネルの出口の先の世界は彼にとってすでに希望の光ではなくなっていた。
しかし、彼自身、初めて乗った電車のトンネルのような、まだ見たことのないような景色が自分の人生に起きることを望んでもいなければ、それが起きることに対して恐怖さえ覚えていた。