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まえがき
「おっさん」は疲れていた。
涙と鼻水が混ざって、唇の上にたまっていく。
舌を軽く出してそれを舐める。
昨日食べたどんなものよりもしょっぱく感じた。
体を必要以上に締め付ける服が邪魔だった。
今まで頑張ってくれた、その服は脱いでしまおう。
そっと、服を脱ぐと体が楽になっていくことを感じた。
しかし、脱ぎ捨てられた制服の前でいつまでも体育座りしている中年を助けたり、声をかけようとする人間はいなかった。
駅の中央通りは大きな岩を落とされた川のように真っ二つに割れていた。